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『この世界の片隅に』英語版でマスターしたい英文法

目次

『この世界の片隅に』の英語

前回と前々回では『この世界の片隅に』英語版で学ぶ英単語と英熟語をとりあげました。

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今回は、『この世界の片隅に』英語版を見て、英文法の復習をしよう、というノリで記事を書いています。

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『この世界の片隅に』の英文法

基本5文型

第4文型

『この世界の片隅に』には「AにBを~する」という意味の動詞の目的語が2つある第4文型の動詞を使った表現がよく出てきます。hand, teach, cost, send, bringです。第4文型がよくわからない人は下記の記事をお読みください。

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I’ll go instead today. Hand me your ration coupon and wallet. 
「私が行ってあげよう。配給切符とお財布貸し。」

insteadは「代わりに」という意味の副詞、「配給切符」はration couponと訳されています。hand A Bは「AにBを手渡す」。hand B to Aと書き換えることができます。

I’ll teach you something in return.
「ほいじゃあうちもお礼に。」

in returnは「お返しに」。晴美が軍艦のことを教えてくれたので、すずは雲の種類について教えようとします。この文章を第3文型に変えると、I’ll teach something to you in return. になります。

Sugar will cost you 20 yen.
「砂糖一斤20円。」※一斤は600グラム

第4文型の動詞の中にはtoやforをつけて第3文型に直すことのできない動詞があります。cost ([金額が]かかる)、envy (うらやむ)、save (省く)などです。

They sent us a single rock instead of his bones.
「だけど骨の代わりがあげな石ころ1つとは。」

hisはすずの兄の要一のことです。第4文型のsendは「AにBを送る」、instead ofは「~の代わりに」。They sent us a single rock…はThey sent a single rock to us…と言いかえることができます。

Shusaku, I’ve brought your notebook for you. 
「周作さん、帳面をお届けにあがりました。」

「~に持ってくる」という意味のbringは第4文型を第3文型に戻すと意味によってtoがついたり、forがつきます。「BのためにAを持ってくる」だとbring A for B、「BのところにAを持ってくる」だとbring A to meになります。

第5文型

第5文型では「主語+動詞+目的語」の後に目的語について説明する「補語」が加わります。

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Am I the only one who doesn’t find it funny?
「素直に笑えんのはうちだけか。」

「find+目的語+補語」は「~が…であるのがわかる」。funnyは「面白い」(making you laugh)。

They’ve always called me a daydreamer. 
「うちはようぼおーとした子ちゃ言われとって。」

すずのセリフです。「call+目的語+補語」は「~を…と呼ぶ」という意味になります。daydreamerは「日中に夢を見る人」から「夢想家」、「空想家」を意味します。

文の種類

付加疑問

付加疑問とは平叙文や命令文の後に短縮の疑問形をつける形です。肯定文には否定の、否定文には肯定の付加疑問をつけます。

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She was a real modern lady, wasn’t she? 
「あー、モガだったんですねー、お姉さん。」

モガはモダンガール(modern girl)の略です。1920年頃に流行った言葉で、西洋の風俗の影響を受けた最先端の女性のことを指しました。『この世界の片隅に』では「モガ」はmodern girlではなく、modern ladyと訳されています。

感嘆文

感嘆文にはHowから始まるもののとWhatから始まるものがあります。ここではWhatから始まる感嘆文を紹介します。感嘆文がよくわからない人は以下の記事を最初に読んでください。

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Oh, look at you. What a pretty girl you are. 

おばあちゃんが夏に家族で遊びに来たすずに浴衣を着せて 「おおっ、べっぴんさんじゃあ。」 と言います。look at youは直訳すると「あなたを見て」になりますが、この表現は驚きを伝える時に用います。訳は文脈によっていろんな風に訳せます。ここでは、「まあー」という感じでオーケーです。

動詞

使役動詞

使役動詞はネイティブがよく使うので、皆さんも自由自在に使えるレベルになるまでしっかりマスターしてください。letとmakeの違いは分からないとダメですからね!!

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I’m sorry, but I can’t let you stay the night.
「申し訳ないが、あんたをここへ泊めるわけにはいかん。」

Suzu, stress will only make you lose more hair. 
「のー、すずさん。気にしよったらはげはよけーにひどうなるで。」

髪の毛は数えられない名詞なのでa hairやhairsとは言いません。

動詞の活用

動詞の活用をいくつか見てみます。過去形と過去分詞で語尾に-edをつけるのが規則動詞、そうでないのが不規則動詞です。

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Oh, oh goodness. I dreamt I married a man in Kure. 
「あー、あせった。呉へお嫁に行った夢見とったわ。」

このdreamtは「~という夢を見る」という意味の動詞dreamの過去形ですが、今どきの英語ではdream-dreamed-dreamedと活用変化します。

I met a kind-hearted person once, and I finally ate the red flesh. 
「いっぺん親切してもらって、赤いとこ食べたねー。」

「~を食べる」という意味のeatはeat-ate-eatenと活用変化します。kind-heartedは「優しい心を持った」ということでkindやgenerousの同義語として使われます。fleshは「柔らかい果肉」のことです。

時制

英語の時制では基本時制(現在時制・過去時制・未来を表わす表現 ) ・完了形・進行形を扱います。特に日本人にわかりにくいのは完了形です。完了形の細かい内容については以下の記事をお読みください。

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周作の家に嫁いだ最初の日。すずは周作に尋ねます。

Um, have we ever actually met before today? 
「あのー、うちらどこかでせんに会いましたか?」
Yes, we have. You don’t remember? 
「うん、おおたで。あんたは覚えとらんか。」
I’m sorry. I’m usually a bit absentminded. 
「すみません。うちゃーただでさえぼおーとしとるもんで。」
You haven‘t changed at all. 
「昔からそがいなかった。」

ここでの現在完了は「現在までの経験」を意味します。everは日本語に訳しづらい副詞ですが、原義はat any timeです。周作の Yes, we have. のhaveは「持つ」という意味の動詞ではなく、Yes, we have met before today. のmet以下が省略された形です。他のことに注意を奪われてぼやっとすることをabsent-mindedと言います。a bitはa littleの同義語です。not ~ at allは「まったく~ない」。

What? You’ve never been to a cafe? 
「知らん?きっちゃ店行ったことないん?」

ここでの現在完了も「現在までの経験」を表わします。neverという否定形を伴って「今まで一度も~ない」を意味します。have been to ~ は「~へ行ったことがある」という意味。その否定形なので「~へ行ったことが一度もない」です。

I do realize that I forced you into marrying me. And yet you’ve never once shown me your angry face.
「わしが無理いうて嫁に来させてしもうたけえ。わしには見せんくせに。あげなおこり顔。」

この現在完了形も「現在までの経験」です。do realizeのdoは動詞の強調。force A into …ingは「Aに~することを強いる」。showは第4文型の動詞で「AにBを見せる」。現在完了にnever onceを伴うと、「今まで一度も~したことがない」という意味になります。

Well, I’m showing it to you now. 
「はっ?今見しとるでしょうが。」

周作の愚痴に、すずは現在進行形を使って言い返しています。ここでのitはおこり顔(my angry face)です。

助動詞

助動詞を使ったセリフは数多くありますが、ここでは6つ見ます。

may

助動詞mayは「~かもしれない」(推量)の意味で使われることが多いですが、「~してもよい」(許可)の意味で使われることもよくあるので「許可」を「推量」と間違えないように注意してください。『この世界の片隅に』では、小学校の授業で先生が「今日の図画は自由画じゃ。 提出したもんから帰ってよーし。 」という場面があります。ここでの「帰ってよーし」が「許可」を表わしています。

Draw anything you want today. You may leave when you’re finished.

finishedは「終えた、済ませた」という意味の形容詞です。次のmayは「~かもしれない」です。

You know, you may never see him again. 
「もう会えんかもしれんけえのう。」

周作はすずに、泊りに来た哲を再び見ることはないかもしれないと言います。

can

「~できる」という意味でよく使われるcanもmayと同じように「~してもよい」(許可)の意味で使うことができます。

Can I take care of the community notices? 
「回覧板、もー回してええですか?」

「回覧板」がcommunity noticeと訳されています。

be able to

be able toをcanの同義語として覚えている人が多いですが、一時的にできるようになったことについてはbe able toを使うことが多いです。それに対して、canは「身に備わった継続的能力」を表わします。結婚式で何も食べていなかった周作を見て不安だったすずは、夜に干し柿を食べる彼を見てほっとします。

I’m glad you’re finally able to eat something now. 
「ちゃんと口から食べんさるけ安心しました。」

I’m glad…「~してうれしい」、finallyは「ついに、やっと」の意味です。

should

I asked him to sleep in the shed. Here. I readied the bed warmer. Go and take it to him. And you should talk to him.    
「納屋の2階へ寝てもろうた。ほれ、行火(あんか)をつけたけ、持って行ってあげんさい。ほいでゆっくり話したらええ。」

shedは「(木で作られた)納屋」、go and takeは「持って行く」。行火がbed warmerとうまく訳されています。「ゆっくり話した方がよい」が you should talk to him. と訳されています。「~した方がよい」はhad betterではないかと思う人もいるかもしれませんが、had betterの方が命令調なのでここではshouldの方が適訳かと思います。shouldは「~すべきだ」、had betterは「~する方がよい」という訳でこの2つの言葉を覚えている人が大半でしょう。どう見ても「~する方がよい」の方が丁寧な言い回しで、「~すべきだ」の方が命令調に聞こえます。でも実は英語では語感的にhad betterの方が上から目線の命令調な言い回しです。had betterは突き放してものを言うニュアンスもあります。shouldの方が相手のことを思って「こうしたらほうがいいよ」という意味合いが含まれます。

should have+過去分詞

My bag in my left hand. Harumi in my right hand. I wish it had been the other way around. I should’ve run barefoot.    
「左手に風呂敷包み。右手に晴美さん。反対じゃったらよかったのに。せめて下駄を脱いで走っておれば。」

晴美を死なせたことを悔やむすず。I wish…は実現不可能なことを願う仮定法過去の表現です。現在の実現不可能な願望だと仮定法過去が用いられますが、晴美はすでに死んでいてるので過去のことです。過去の実現しなかったことに対する気持ちを表わすときは仮定法過去完了を用います。だからここでは、I wish it was the other way around. ではなくて、I wish it had been the other way around. となっています。the other way aroundは「逆に」、run barefootは「裸足で走る」という意味です。「~すべきだ」という意味のshouldは「should have+過去分詞」は「~すべきだったのに(しなかった)」という意味で、過去において実行されなかったことに対する後悔(自分についての場合)や非難(他人についての場合)の気持ちを表します。

分詞

英語学習者が分詞で一番わかりにくいのは分詞構文です。分詞構文の学習では、分詞構文の主語が本文の主語とちがう独立分詞構文や、分詞構文の主語と本文の主語がちがうのにそれを明示しない懸垂分詞も一緒に学ばされるのでわけがわからなく人も多いかと思います。ぶっちゃけ、独立分詞構文と懸垂分詞は使わない方がよい用法です。分詞構文はよく使われるのでややこしいのは無視して、基本的なことをしっかり習得しましょう。

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I can’t believe I’m here, doing this with him.
「こんなことしとる、うち、この人と。」

このdoingが分詞構文です。doingの主語は主文のIです。意味は付帯状況。付帯状況の意味が分からない人が多いでしょうが、同時生起とも言います。この文では、「ここにいる」時に「彼とこんなことをしている」という状況を表わしています。I can’t believe I’m here and do this with him. が変化した形です。

動名詞とto不定詞

動名詞とto不定詞が他動詞の目的語となることがありますが、動詞には①to不定詞だけを目的語にとる動詞、②動名詞だけを目的語にとる動詞、③動名詞とto不定詞のどちらも目的語にとる動詞があります。また③の場合、意味にほとんど違いがない場合と、意味が違う場合があります。

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You won’t be able to go home until you finish drawing. 
「はよ絵出さんと、いつまでも帰れんよ。」

finishは動名詞だけを目的語にとる動詞です。すずがぼんやり海を眺めて絵を描こうとしない哲に、「絵を描き終えないと家に変えることができないよ」と言っています。

Suzu, these 18 months… I really loved coming home to you, I loved walking with you and listening to you talk.
「すずさん、わしは楽しかったで。この1年半、あんたの居る家へ帰れて。あんたと連ろうと歩くんもひらひら喋るも…。」

loveは「~を愛する」という意味で一番よく使われますが、「~が好きである」という意味のlikeの強意形(「~大好きである」)としてもよく使われます。like, love, prefer (~より好む), hate (~を憎む)などの好き嫌いを表わす動詞は動名詞とto不定詞のどちらも目的語にとります。意味も変わらないのでここでは、I loved to walk with you and listen to you talk. と言ってもかまいません。listen to you talkは「youがtalkするのをlisten to」を意味する知覚動詞です。

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仮定法

仮定法でよく使われるのがI wish…という表現です。仮定法過去を用いると、現在の実現が困難だったり不可能な願望を表わします。「~だったらなあ」と訳されることが多いです。

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I wish I could draw like you. 
「えーねー、すずちゃんうまいけん。」

すずの絵を見て、クラスの友達が「すずちゃんみたいに絵を描けたらなあ」と言っています。現在の願望なので助動詞canが過去形のcouldになっています。

I really do wish that we could all just live happily, you know? 
「みんながわろーて暮らせりゃええのにね。」

突然の空襲で空を見ると不思議な光景が。すずは「今ここに絵の具があれば。」 と、とんでもないことを思います。

I wish I had some paint.

すずの妹のすみが呉に住むすずに広島に戻ってきたらどうかと誘います。ここでas thoughという熟語を用いています。as thoughはas ifと同義ですが、直説法と仮定法のどちらでも用いられます。仮定法だとas thoughの後が仮定法過去もしくは仮定法過去完了になりますが(「まるで[あたかも]~であるかのように」という意味)、実際にあるかもしれないことを「~のような、~らしい」という意味で使う場合は、直説法として使われるのでas though以下の動詞が現在形のままです。ここでは直説法として用いられています。

It doesn’t seem as though the bombings are as bad over there. 
「ひどい空襲もないし…」

as bad over thereはわかりにくいです。間違えてas bad as over thereのasが抜けているのかもしれません。This place is not as bad as over there. だと「この場所はあそこほどはひどくない」という意味になります。

片手を失ったすず。両手があったならと実現不可能な願いの言葉を発する場面があります。

Yeah. In times like this I wish I had both hands, so I could hold his. 
「ああ、こげな時、両手があれば、この人の不安な手にそっと、片手を重ねられるのに。」

his handのhandが省略されています。ライティングではこのような省略は不適切ですが、話し言葉ではこのような省略がよくあります。

if only…はI wish…と同じく仮定法で実現不可能・困難な願望を表わしますが、I wish…よりもその願望の度合いが強いニュアンスがあります。すずが原爆症で寝込んでいるすみに会いに行ったときにこの構文を使っています。

If only I had my hand, I’d draw ‘Yoichi’s Adventures in the South Seas.’ 
「あー、手がありゃあ、お兄ちゃんの「南洋冒険記」でも書いてあげられるのにねえ。」

戦死したはずの兄が実家がある江波に帰っていないかなあとつぶやく場面があります。日本語版を見て、「要一は戦死したはずなのに何バカなことを言っているんだろう?」と思った人もいるでしょうが、英語版では仮定法が用いられているので、すずはありえないことを願っているというのがはっきりわかります。

I wish Yoichi could come back to Eba. 
「江波へ帰っとらんかえねえ、お兄ちゃん。」

妹のすみの見舞いに来ているからすずは江波にいるはずなのに、兄が江波に帰っていないか考えるのは何か変、と思った人もいるでしょうが、実はこの場面は江波の実家ではありません。父と母を失って実家にいては誰も看病する人がいないので、すみは草津の親戚の家にいます。草津は温泉の草津ではなくて、広島市西区にある地名です。

疑問詞

疑問文

exactlyは「正確に」という意味の副詞ですが、疑問詞の後に出てくるexactlyは単なる強調です。ただの強調なので、なくても文意がほとんど変わりません。晴美がすずと墨を貸してとせがむのはすずが何か言ったせいだと思った径子はすずに、 「晴美に何言うたん?」 と言います。

What exactly did you tell Harumi?

What did you tell Harumi? でも意味はほとんど変わりません。whatの箇所が強調されてexactlyを伴っています。晴美がわけわからん事を言っているという気持ちが強いのでexactlyという文句が追加されたのでしょう。

間接疑問

疑問文を文の一部として用いることを間接疑問と言います。間接疑問では平叙文と同じ語順になります。How scary could my brother be? (私の兄がどれだけ怖いであろうか?)が動詞の目的語になったセリフが出てきます。

I forgot how scary my brother could be. 
「お兄ちゃんが怖いの、忘れとったのだ。」

周作らが森にいた女性(すずですが)に駅に行くまでの道を尋ねる時も間接疑問が使われています。

Could you tell us where the train station is at? 
「電停はどっちですか?」

最後のatは不要じゃないかなあ。Where is the train station? の間接疑問と考えると Could you tell us where the train station is? で良いかと思います。

次は、間接疑問を使った径子のセリフです。「これは何の列ですか?」という意味のWhat is this line for? がknowの目的語となっています。

Hi, Suzu. Do you know what this line is for?
「あっすずさん。こりゃ何の行列かね?」

接続詞

接続詞は数多くありますがここでは2つだけとりあげます。

Whenever night falls, he falls asleep. 
「夜になると寝てしまうという事じゃったんじゃ。」

wheneverは「~するたびに」を意味する接続詞です。night fallsは「夜が訪れる」、fall asleepは「眠りに落ちる」。前者のfallは第1文型で「 (時節などが)来る」、後者のfallは第2文型で「急にある状態になる」ことを意味しますが、慣用句的に使われることが多いので、night fallsとfall asleepはどちらもそのまま覚えてください。

I understand you had no choice, though. You were brought here by my brother. You just do what you’re told.
その点あんたは、周りの言いなりに知らん家に嫁に来て、言いなりに働かされて、さぞやつまらん人生じゃろう思うわ。

althoughとthoughは「~だけれども」という意味の接続詞ですが、thoughは文末に来ることがあります。althoughが文末に来ることはありません。そもそも接続詞が文末に来ることはありません。これはどういうことでしょうか? 正解は、althoughは接続詞としか使われないので文末には来ない、thoughは文末に来ることがあるが、それは接続詞ではなくて副詞としてである、ということです。接続詞的な意味を持つ副詞を接続副詞と言いますが、副詞は文のどこに来てもよいので、接続副詞も文の先頭、中間、末尾のどこに置くことも可能です。例えば、接続副詞のhowever (しかしながら)はよく文の途中や文末に出てきます。

関係詞

『この世界の片隅に』英語版には関係詞を使ったセリフが多数出てきます。そのいくつかを見てみます。

関係代名詞のthat

My right hand that drew many rabbits seven years ago.
「7年前の2月にはうさぎをいくつも描いた右手。」

thatはwhichでもかまいません。drewはdraw (~を描く)の過去形です。「2月には」は英訳されていません。

関係代名詞のwhat

関係代名詞whatは「~するところのもの」という意味で、それ自身の中に先行詞を含んでいます。whatの導く節は名詞節で、文の中の主語・目的語・補語のいずれかになります。すずが広島へ帰るとわめくと、Do what you want. (あなたのやりたいことをしろ!)と突き放す周作。

I can’t hear you. I can’t. I can’t. I can’t hear a thing. I’m going home to Hiroshima!  
「聞こえん。聞こえん、聞こえん。1個も聞こえん。帰る、帰る。広島へ帰る!」
Fine. Do what you want.  
「おお、そうか。勝手にせえ。」

目的語としての関係代名詞whatは上のセリフのように動詞の目的語になることもあれば、下のセリフのように前置詞の目的語になることもあります。

Well, from what I heard, it was a new bomb.
「広島へは新型爆弾が落とされたらしい。」

関係副詞のwhere

関係代名詞は、文中で主語・目的語・補語の役割を果たす名詞的用法として用いられますが、関係副詞は文字通り文中で副詞の役割を果たします。関係副詞にはwhen, where, why, howがあります。次の文は関係副詞whereが使われている例です。文が長いですが、この映画で特に重要なセリフなので全文を引用します。

Suzu, this is the bridge where I first met you. Unfortunately, we can’t go back in time. You and I will always keep changing, and so will the city. But I will always be able to tell you apart. I’ll find this beauty mark right away.
「すずさん、わしとすずさんが初めておうたんはこの橋の上じゃった。もうあの頃には戻らん。この街もわしらも変わり続けていくんじゃろうが、わしはすずさんがいつでもわかる。ここへほくろがあるけ、すぐわかるで。」

Shusaku, thank you. Thank you for coming to find me in this Corner of the World. Please, never leave, and always be by my side.  
「周作さん、ありがとう。周作さんありがとう。この世界の片隅にうちを見つけてくれて。ほんでもう離れんで、ずっとそばにおってください。」

tell A apartは「Aを見分ける」。ほくろはmoleと言いますが、特に女性の魅力的に見えるほくろはbeauty markと婉曲的に表現します。by A’s sideは「Aの近くに、そばに」という意味です。

複合関係代名詞

関係代名詞や関係副詞に-everがついたものを複合関係代名詞、複合関係副詞といいます。複合関係代名詞にはwhoever, whichever, whatever, 複合関係副詞にはwhenever, wherever, howeverがあります。

Yes, of course! I’ll draw whatever you want.
「お安いご用じゃ。ほかにもあったら言うてつかわさい。」

whatever you wantは「あなたが望むものは何でも」という意味になります。

Our battle is to survive with whatever we have.
「なんでも使うて暮らし続けるのがうちらの戦いですけ。」

「生き残る」ことをsurviveと言いますが、surviveは「(困難な状況で)何とかやっていく」という意味もあります。whatever we haveは「私たちが持っているものは何でも」。

Hi, Suzu. Do you know what this line is for?
「あっすずさん。こりゃ何の行列かね?」
No idea, but I’ll take whatever. We don’t really have anything! 「さあ。何でもええですよ。何でも足らんのですけえ。」

whateverの後の言葉が省略されています。…whatever I can takeでも…whatever I can getでもかまいません。

省略

I love you. But I might forget your face after three months without you. That’s why I’ll wait for you here. Because I don’t know if I would ever be able to find you.
「うちはあんたがすきです。ほいでも三月も会わんかったら顔も忘れてしまうかもしれん。じゃけ、この家で待っとります。この家に居らんと、周作さんをみつけられんかも知れんもん。」

That’s why…のwhyは関係副詞です。That is the reason why…のthe reason (理由)が省略された形です。この形ではthe reasonは普通、省略されます。

前置詞

前置詞は特に印象深い3つの前置詞だけ見てみます。前置詞に興味がある方は、下記記事の第26週と第27週をご確認ください。

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into

Then I fell into his basket and met an older boy. 
「落ちたかごん中に知らん兄さんがおりんさった。」

fellはfall (落ちる)の過去形です。an older boyは「(自分より)年上の男の子」という意味です。「~の中に」という意味の前置詞だとinをまず思いつきますが、fall in Aだと「Aに落ちる」という結果だけが注目されます。Aに落ちている過程が目に入ったらfall into Aです。intoは動的な印象を与えます。

from

「他動詞+目的語+前置詞」の形をとる動詞は非常に多いです。前置詞にはof, for, from, with, into, onなどが来ますが、ここでは「他動詞+目的語+from」の形をとる動詞を2つだけ見ます。hide A from B (AをBから隠す)とprotect A from B (AをBから守る)です。

We’re going to need to hide it from the ants.
「アリ子さんに見つからんとこ隠さんと。」

need to doは「~する必要がある」、antは「アリ」。ここでのantはどこにでもいるアリのことではなく、壺から砂糖を持って行っている目の前のアリのことなので定冠詞のtheがついています。

We thought the water could protect our sugar from the ants.
「水の上ならアリ子さんも近寄れんじゃろう思うたのに。」

over

Suzu, it’s boiling over. 
「すずさん、噴いとるで。」

boil overは句動詞で「沸騰してこぼれる」を意味します。overは単独では「真上に」を意味します。離れていても、接触していても上にあればoverを使えます。

名詞

名詞が特に難しく感じられるのは、その名詞が数えられるか数えられないかわかりにくいときです。数えられる場合は単数の時はa/anをつけ、複数の時は-sをつけないといけませんが(規則複数の時)、数えられない場合に不定冠詞をつけたり、複数形の形にしたら間違いになります。

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【2分でわかる】可算名詞と不可算名詞の違い 名詞には数えられるものと数えられないものがあります。「犬」は数えられるのでa dogやdogsと言います。「情報」という意味のinformationは数えられないのでan informationやinformationsとは言えません。前者を可算名詞、後者を不可算名詞と言います。

ここでは不可算名詞を3つ紹介します。

We have lots of rice today. The grains are swollen. 「けさはえろうご飯が多いのー。飯粒が膨らんどる。」

swollenはswell-swelled-swollen (膨れる)の過去分詞形です。rice (米)もgrain (穀物)も基本、数えられません。日本語でも「ご飯ひとつ」とは言わないです。ご飯自体は数えられないから「ご飯一杯」(a bowl of rice)と言います。ただし、数えようと思えば数えられないことありません。にもかかわらず、英語ではriceは常に数えられません。a riceやricesと言うことはないということです。しかし、grainは「数えようと思えば数えられる」扱いで複数形になることがあります。ここでは周作はgrainsと言っています。複数形にするとひとつひとつの穀物が見えるイメージがあって、それがいくつもあるという印象を与えます。ここでは一つ一つの穀物が膨れているイメージを持てます。これが The grain is swollen. と言うと、穀物が一塊に見える印象になります。

We caught many fish in Kure that day.
「その日、呉では魚がようけとれた。」

「1匹の魚」はa fishです。では「多くの魚」は? 正解はmany fishesではなく、many fishになります。これはどういうことかと言うと、fishの複数形が単数形と同じfishだからです。

Water! We need more water!
「水!もっと水!」

waterはもちろん数えられません。

冠詞

「けが人は行けん。」の英訳です。「the+形容詞」で「~な人々」の意味で複数の普通名詞になることがあります。「博学な人」だとthe learnedです。「けが人」はthe woundedになります。wounded peopleと同義です。

代名詞

否定文でsomeだと一部のものだけの否定、anyだとすべてを否定という意味になります。晴美はみんなが笑っていること「すべて」が理解できないので I don’t understand any of it…と言っています。

I don’t understand any of it, but is sure sounds funny!
「なんかわからんがつられておかしうなってきた。」

すべてというのは複数あるものの全部という意味になるので any of itではなくてany of themではないかと尋ねられそうですが、not…any of it という表現はよく見かけるので間違いではありません。なぜ間違いではないのか文法的にどう説明すればよいのかはよくわかりません。知っている人がいれば教えてください^^。

It snowed a lot that winter. I couldn’t wait for spring to come.
「その冬は雪が多く、春が待ち遠しかった。」

itは天候のitです。「雨が降る」はIt rains. 「雪が降る」はIt snows. になります。

副詞

Sumi, thank you for coming to visit.
「すみちゃん、よう来てくれたねえ。」
The army officer was kind enough to give me a lift on the relief truck. Well, it’s not new, but it’s pure cotton.  
「陸軍の将校さんが救援のトラックへ乗してくれんさってね。はい、古着じゃが純綿よ。」

「形容詞+enough to do」は「~するのに…な」という意味になります。give A a liftは「Aを同乗させる」という意味になりますが、これはイギリス英語で、アメリカではgive A a rideと言います。

比較

『この世界の片隅に』には比較の表現はあまり出てきません。その中で見かけたのが以下のセリフです。

The house suddenly feels so much larger than before.
「なんか急に家が広うなった気がするねえ。」

feel largeだと「大きく感じる」、feel larger than beforeだと「以前より大きく感じる」、much larger than beforeだとmuchが比較級を修飾して「はるかに、ずっと」という意味になります、さらにmuchを強調するとso much larger than…になります。

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