英文法

例文で覚える英語の仮定法

※『例文で英単語を4800語覚える』講座受講生を対象としたサブノートです。

テキストは旺文社の『表現のための実践ロイヤル英文法』を使用。受講者は「第9章 法」(pp.189-207)を熟読してください。

仮定法とは何か

仮定法は日本語にはない表現法なのでよく理解できていない人が多いようです。日本語の「仮定」とは未定のこと、不確かなことを仮にこうと定めることを意味します。「もし~ならば」という表現が典型的ですが、「もし広瀬すずがボクと結婚したら」と言えば、仮定の表現と言えます。英語ではif…で表現します。しかし、「もし~ならば」という意味のif節には直接法と仮定法の2種類があります。「仮定法」で仮定するのはありそうもないこと、実現が(ほぼ)不可能なことです。つまり、現実に反する仮想です。「すずちゃんが俺と結婚するわけねーよ」というときに仮定法を使います。それがありえることと考えて「もしすずちゃんがボクと結婚したら」と言う場合は、仮定法を用いません。その場合は直説法を用います。「直説法」という文法用語は聞きなれていないかもしれませんが、文法的には特に複雑でありません。

If I get married to Suzu-chan, I want to go to Hawaii with her. (もしすずちゃんと結婚したら、彼女とハワイに行きたい)

ただし 99.999%の日本人男性にとっては、すずちゃんと結婚するなんて絶対ありえないことです。だからほとんどの人はこれを英語で言う時は、仮定法を用いないといけません。

If I got married to Suzu-chan, I could go to Hawaii with her. (もしすずちゃんと結婚したら、彼女と一緒にハワイに行けるのになあ)

このように日本語ではどちらも「もしすずちゃんと結婚したら」なのに、英語では実現可能なifと実現困難[or不可能]なifは区別されます。

繰り返しになりますが、日本語の「もし~だったら」はそれが実現する可能性が90%であろうと、0%であろうと特に区別しませんが、英語では実現する可能性がある場合と実現しそうもない場合を意識的に区別し、後者の場合では仮定法を用います。英文法でいう仮定法とは、実現しそうもない場合の時にのみ使います(例えば「もし明日雨が降ったら」といったありそうなことはそのままIf it rains tomorrow…となり(直説法と言います)、仮定法は用いられません)。

仮定法でまず覚えておくべきことは3つあります。

英語では実現しそうなことと実現しそうもない事が区別されるというのが覚えるべき第1点。

第2の重要ポイントは仮定法を用いられる場合は、今に関することであれば仮定法過去が使われ過去形になり、過去に関することであれば仮定法過去完了(「had+過去分詞」)が使われることです。

3つめの大事な点は、仮定法過去では一般動詞は過去形が使われますが、be動詞の場合、人称に関係なくwereとなる点です。ただし、口語では3人称単数の場合wasでもかまいません。

ある事柄が実現可能かどうかはあくまでも話し手の主観であることに注意してください。99.9%の人が「あなたがすずちゃんと結婚できるわけない」と思っていても、話し手がそれはありうると考えていれば、仮定法ではなく、直説法で表現します。

ではジブリのセリフを通して仮定法の表現をしっかり使えるようになりましょう^o^

直接法

ポルコに空中戦を挑んだカーチスのセリフです「一対一だ、勝負しろ! 逃げるな、みんなに言いふらしちゃうぞー! 」「また会おうぜ アメリカ野郎!」

“Fight me, pig! One on one! … If you run away, I’ll tell everyone you’re chicken!”

fight=~と戦う; one one on=1対1の; run away=逃げる、退散する; chicken=弱虫、臆病者

ポルコが逃げる可能性はありうるので直説法が使われています。

『ハウルの動く城』でソフィーが初めてカルシファーに出会った場面です。ソフィーはカルシファーに呪いを解いてくれと頼みます。「悪魔と取引をするってわけね。 あんたそれ約束できるの? 」「悪魔は約束はしないさ。」

英語版ではかなり意訳されています。

If you’re a demon, how do I know I can trust you? You promise to help me if I help you?” “I don’t know, lady. Demons don’t make promises.”

demon=悪魔; trust=~を信用する; promise to=~することを約束する; make a promise=約束をする

「あんたが悪魔だったら、どうすればあんたのことを信用できるってわかるの?」という意味のセリフになっていますが、ここでソフィーはすでにカルシファーを悪魔だと思っているから仮定法が使われていません。ソフィーはカルシファーが悪魔だとわかった上で反語的に語っています。反語的というのはつまり、悪魔のあんたを信用するすべは何もないからあんたと取引できるわけないじゃないか、と言っているわけです。

次は『天空の城ラピュタ』の場面です。ムスカらから逃れて廃坑内を歩いているとパズーとシータはポムじいさんに出会います。

ポムじいさん 「はて・・・パズーによく似た子鬼だ。おまけに女の子の小鬼までおるわい・・。」
パズー 「ぼくたち、海賊に追われてるんだ。」

“And if these old eyes don’t deceive me, there’s a she-goblin with you.”
“There are pirates chasing us, Uncle Pom.”

deceive =~をだます; she-goblin=女の子鬼; pirate = 海賊; chase=~を追いかける

英語版では「わしの見間違いでなかったら、パズーと一緒に女の子鬼がおるぞ。」という意味になっています。my eyes deceive me は「見間違える」、my ears deceive meは「聞き間違える」ということですが、見間違えたり、見間違えなかったりすることは日常生活で普通にあることなので仮定法が使われていません。

仮定法過去

現在の事実に反する仮定は仮定法過去を用います。仮定法過去では

If S+動詞の過去形…, S+助動詞+動詞の原形

の形をとります。ただし、「動詞の過去形」にbe動詞がくるときは、主語が単数であってもwasではなくwereになります(ただし口語ではwasを使う人もいます)。この仮定法過去で一番定番の表現が「もし私があなただったら」(If I were you…)という言い回しです。『君の名は。』みたいに男女が入れ替わることは実際にはありえないことなので、この言い回しで直説法が使われることはありません。必ず仮定法が使われます。

If I were you…

ジジとキキの会話です。 「卵泥棒がまた来たって言ってるよ」「そんなあ、どうしよう」

“They’re calling you an egg stealer. … If I were you, I wouldn’t go back down there again.” “We have to! Hold on!”

英語版ではジジの「もし僕がキキだったらそこにまた戻らないよ。」というセリフが加えられています。キキの 「そんなあ、どうしよう」 は英語セリフでは「戻らなきゃいけないの! つかまって!」という意味に変わっています。ジジがキキになることはできないので仮定法過去が使われています。

次は『ハウルの動く城』から
ソフィー「窓開けて、マルクル。」 “Markl, will you crack a window, please?”
マルクル「うん。」 “Mm-hmm.”
荒地の魔女「窓は開けない方が良いと思うよ。」 “I wouldn’t open that window, if I were you, dear.”

crack a windowは「窓をほんの少し開ける」という意味です。英語版で荒地の魔女は「もし私があんただったら窓をあけないよ」と言っています。なぜこの場面では荒地の魔女は「自分がソフィーだったら」という仮定をしたのでしょうか。これはソフィーの立場だったら、ということです。自分はハウルの城がどうなろうが知ったことではないが、ソフィーはそれは守ろうとしているだろう。だったら窓を開けるなんてバカなことはしない方が賢明だ、と考えての発言なわけです。

次は『天空の城ラピュタ』から

シータ 「ひどい目にあってないかしら・・・。親方さんや、機関士さんたち・・・」
パズー 「大丈夫。鉱山の男は、そんなにヤワじゃないよ。さあ、行こう!出口を探さなきゃ。」

“I hope they’re all right – your boss and his wife and that nice train engineer.”
”My friends are all miners. They can take care of themselves. I wouldn’t worry about them if I were you.”

train engineer=機関士; miner=鉱山労働者; take care of oneself=自分の身は自分で守る; worry about=~を心配する

英語版でパズーはシータに「ぼくがシータだったら彼らのこと心配したりしないな。」と言っていますが、この場面では仮定法を用いずに、I do not worry about them. とか You do not have to worry about them. と言ってもほとんど意味が変わりません。でもパズーはシータの立場になってみて仮定法を使って、彼らのことは心配しなくていいよ、と言っています。

仮定法過去完了

過去の事実に反する仮定は仮定法過去完了を用います。

If S+動詞の過去完了形…, S+助動詞+have+過去分詞

If his father had not died before he was fourteen, he would probably have studied medicine.

「彼が14歳になる前に彼の父が死ななかったら、彼は医学を学ばなかったであろう。」 彼の父はなくなっているので、「もし彼の父が死んでいないならば」というのは事実と異なる仮定なので仮定法が用いられます。そして、これは過去のことなので仮定法過去完了が使われています。

were toを用いた条件文

if節にwere toを使うと、未来の事柄についての仮定を表わします。その仮定は実現不可能なものから、実現可能なものを含み、実現可能性がどの程度かは文脈で判断するしかありません。

If the Internet were to suddenly stop functioning, the results could be catastrophic.

「インターネットが突然機能しなくなったら、さんさんたる結果になるかもしれない。」 (『実践ロイヤル英文法』から引用)

shouldを用いた条件文

if節にshouldを使うと実現可能性の低い仮定を表わします。実現不可能な仮定にはshouldは使えません。

If we should ever get to Heaven, we shall find nobody to reproach us for being black, or for being slaves.

黒人作家のJupiter Hammon(1711-1806)の言葉です。「万が一我々が天国に行けたら、黒人であることや奴隷であることを非難する人は誰もいないでしょう。」。if節の中で使われるeverは条件の強意を示します。

ifの省略

仮定法の条件文ではif節の主語と(助)動詞を倒置してifを省くことができます。これは文語調の表現であり、自分がこの表現を使いこなせるようになる必要はまったくありませんが、凝った文章を書くネイティブの文章にはよく出てくるので、こういう表現方法があるということは頭に入れておいてください。

I don’t think I would ever have been able to be an actress had I not started at nine years old.

女優のKristen Stewartの言葉です。「9歳で始めていなかったら、女優になれたとは思わないな。」 had I not started…はif I had not started…のifが省略され倒置が生じた形です。

I wish…

「~だったらなあ」という意味のI wish構文は実現できそうもない願望を表わすので仮定法のルールが適用されます。そのため、今のことであれば「I wish+S+(助)動詞の過去形」、過去のことであれば「I wish+S+had 過去完了」の形になります。

キキがウインドウの向こう側にあるきれいな服を見て「もうちょっとステキな服ならよかったのにね。」とつぶやきます。

I wish I had something pretty to wear. My dress is so ugly.

dress=服; ugly=見苦しい

魔女は紺色の服を着ないといけないのでかわいい服を着ることができないわけです。実現不可能な願望だからI wishの仮定法が使われています。今の願望なのでI wish I had had…ではなく、I wish I had…となっています。

空を飛べるキキをうらやましがるトンボ。「あーあ、僕も魔女の家に生まれればよかった。キキなんかホーキでツィーだけどさ。」

You’re so lucky, Kiki. I wish I could fly. People like you can just fly away on a broomstick.

fly awayは「飛び去る」、broomstickは「ほうきの柄」を意味します。今に関する実現不可能な願望なので「I wish+S+過去形」の形になっています。

ポルコが支払う大金を見て銀行員がこう言います。「うらやましい。私もこのくらい稼いでみたいですな。」

I envy you, Mr. Rosso. I wish I could make money the way you do.

make money=お金をもうける; the way=~のように

銀行員が賞金稼ぎのポルコのようにお金を稼ぐことはまず不可能なので仮定法のI wish構文が使われています。

『天空の城ラピュタ』の場面です。ロボットに連れられてラピュタを見回るパズー。 すると墓を発見します。「お墓だね。彫ってある字が読めるといいんだけど。」

“Wow. It must be a monument. I wish I could read what it says.”

monumentは「記念碑」を意味します。ここでパズーは記念碑に彫ってある字を読みたいと言っていますが、読めるわけはないので仮定法のI wish構文が使われています。

次は『風の谷のナウシカ』のアスベルのセリフです。「ラステルは ぼくの双子の妹なんだ。そばにいてやりたかった。」

I can’t believe she’s dead. Lastel was my twin sister. I wish I could have been there for her.

アスベルはナウシカからラステルが亡くなった話を聞きます。その時に自分もその場にいたかったと言っているので現在ではなく過去に関する願望ということになり、仮定法過去完了が用いられています。今の実現しない願望だとすると、I wish I could be there for her. になります。

It is (about) time…

仮定法のIt is time…構文も見ておきましょう。「もうそろそろ~してもよい頃だ」という意味ですが、実際にはまだやっていないので仮定法が使われます。It is time…だと「まさにその時だ」、It is about time…だと「そろそろもうその頃だ」というニュアンスの違いがありますがほぼ同義と見てかまいません。

『風の谷のナウシカ』でジルは旅から戻ってきたユパにこう言います。「どうだ ユパ。そろそろ この谷に腰をすえぬか。」

Lord Yupa, isn’t it about time you settled down here?

settle down=~に落ち着く、定住する

settle downが過去形になっていることに注意してください。疑問文になっていますが、これは修辞疑問です。「もうここに腰を据える時期だろう」と言っているわけです。

as if…

as if構文は直説法でも仮定法でも使われます。事実だろうと判断して「~みたいだ」という意味で使うときは直説法、事実とは異なる空想をして「あたかも~のようだ」という意味で使うときは仮定法になります。直説法の時はas if以下の動詞はそのままで、仮定法の時はas if以下の動詞は、現在の事実とは異なる場合は仮定法過去、過去の事実と異なる場合は仮定法過去完了を用います。

直接法

ジルに「今度の旅はどうじゃった」と聞かれてユパはこう答えます。

「うーん ひどいものだ。南でまた2つの国が腐海にのまれてしまった。腐海は着実に広がっている。なのにどこへいっても戦に飢え、不吉な影ばかりだ。」

I found two more kingdoms to the south that have been consumed by the jungle. It seems as if it spreads faster every day. And the kingdoms that still survive are torn by war and starvation.

kingdom=王国; consume=~を破壊する; spread=広がる; survive=生き残る; be torn by A=Aに引き裂かれる; war=戦争; starvation=飢餓 

ユパはジルに腐海が広がるペースが毎日早くなっているようだと言っていますが、このことはありえることとしての発言ですから直説法が用いられています。

仮定法

次は仮定法のas if構文です。「パズーに会わせて!」とシータが言うと、ムスカは「彼なら安心したまえ。あの石頭は、 私のより頑丈だよ。」 と返答します。英語版ではこの箇所が「シータ、心配しないでよい。君の友人はあたかも王族の来賓のような待遇を受けている」という意味のセリフに変わっています。

Don’t worry, Sheeta. Your friend is being treated as if he were the guest of royalty.

be treated=扱いを受ける; royalty=王族

パズーが王族のゲストのわけはないので仮定法が使われ、as if he is…ではなくas if he were…となっています。

If it were not for ~

If it were not for..は「もし~がなかったら」という意味の仮定法表現です。 現実の事実に反する場合はこの表現を使い、過去の事実に反する場合はIt it had not been for…を使います。

『ハウルの動く城』でソフィーがカカシにキスをすると魔法が解けてカカシは王子に戻ります。

荒地の魔女 「愛する者にキスされないと解けない呪いね。」
カブ王子 「その通り。ソフィーが助けてくれなければ、私は死んでいたでしょう。」

“I know that spell. A kiss from your true love breaks it.”
“That’s right. If it weren’t for Sophie, I would have been a scarecrow for the rest of my life.”

scarecrow=かかし; for the rest of one’s life=これから一生

「ソフィーが助けてくれなければ、私は死んでいたでしょう」が「ソフィーがいなかったら、これから一生のかかしのままでいたでしょう」という意味に変わっています。ソフィーは実際にはいるのに、もしいなかったらというから仮定法過去が使われています。