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『ドラゴン桜』西岡壱誠さんの英語勉強法がわけわからない

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西岡壱誠さんが唱える英語学習法

ドラゴン桜2編集担当の西岡壱誠という元東大生の方が東洋経済に「英語が苦手な人ほど「実は日本語が残念」な現実」という記事を寄稿しています。しかし、不思議な内容でした。

西岡さんによれば、英語の成績が伸び悩む人は日本語ができていないことが多く、日本語力をつけると英語力が向上するそうです。西岡さんの主張は以下の3点から構成されています。
英語ができない人は日本語ができていない
「まず大前提として、英語ができない人って、実は日本語ができていない場合が非常に多いのです。」
日本語力がある人は英語ができている
「日本語ができている人は、知らない単語の意味を「推測」する力にも優れています。 」
日本語力をつければ英語ができるようになる
「こんなふうに、日本語力があれば英語が理解しやすくなることって、実は非常に多いのです。 」

そんなことないですよ。英語ネイティブは日本語がまったくできないけど英語を話せます。あなたは日英バイリンガルの子供よりも日本語力があるでしょうが、英語力ではほぼ確実に負けます。西岡さんは日本語ができている人は、知らない英単語の意味を推測する力に優れていると主張し、その例としてstructure, order, hungry, must, compromiseの5つの単語をあげています。しかしその内容がめちゃくちゃです。1つずつ見てみましょう。

西岡壱誠さんが例に挙げる日本語ができると意味のわかる英単語

structure 構造➡建物、気候、組織、組み立て?

西岡壱誠─structureは「構造」という意味があると理解しただけで、日本語力がある人はstructureには「建物」、「機構」、「組織」、「組み立て」という意味があることもわかる。

この「structure」という英単語には、「構造」という意味以外にもさまざまな意味があります。「建物」とか「機構」とか、「組織」とか「組み立て」とか、そういう意味でも使われるのです。…ここで日本語力のある人なら、「構造」という言葉の意味を考えることで、物事が積み重なって何かが出来上がっているイメージが湧くはずです。「建物」はコンクリートや木が積み重なってできていますし、組織機構は人が集まって積み重なってできています。何かを組み立てるわけですから、「組み立て」だって理解できます。つまり、日本語ができている人なら、「structure=構造」という理解だけで、他のさまざまな意味がすんなりと頭の中に入ってくるのです。

structureは主に2つの意味しかありません。不可算の「構造」とそれが可視化して可算となる「構造物」の2つです。structureはthe arrangement of parts in a system、つまり「システムにおける部分の配置」を意味し、これが日本語では「構造」と訳されます。同じ部分を使ってもその組み合わせ方が異なれば全体は違うものになります。だからどう配置されるか、つまりstructureが重要となります。corporate structureは「企業構造」、economic structureは「経済構造」、grammatical structureは「文法構造」、molecular structureは「分子構造」、power structureは「権力構造」、social structureは「社会構造」と訳されます。structureに「構造」以外の訳語が当てられることもあります。pricing structureは「価格構成」、pay structureは「給与体系」、political structureは「政治体制」と訳されますが、structureの意味が異なるからではありません。日本語では違う訳語が慣用的にあてられているだけなので、頭の中では「価格構造」、「給与構造」、「政治構造」という意味と理解して何の支障もありません。structureは可算化されて「構造物」という意味で使われることもあります。ビルや橋などの大きなものに使われ、その場合は「建造物」と訳してかまいませんが、「構造物」と訳しても特に問題ありません。structureが「組織」や「機構」と訳されることは確かにあります。体の中のstructureは「組織」と訳されるし(cranial structureは頭蓋組織、fiber structureは繊維組織、lymphatic structureはリンパ組織と訳されます)、political structureが「政治機構」、power structureが「権力機構」と訳されることがあります。しかし、structureが違う意味として使われているから訳も違うのではありません。日本語では言い方が変わるだけです。ちなみにstructureが「組み立て」と訳されることはほとんどないかと思われます。

structureは「構造」、「構造物」とだけ覚えればよいです。「建物」、「機構」、「組織」と訳されることはありますが、それはそう訳されることもあるというだけのことであって、和文英訳の問題で「建物」や「組織」をbuildingやorganizationではなくstructureと訳したらほぼ確実に減点されます。英語のstructureと日本語の「構造」は語法が異なります。日本語が得意だとstructureの理解が深まるということはありません。

order 秩序➡注文、命令、順序、順番?

西岡壱誠─orderは「秩序」という意味があると理解しただけで、日本語力がある人はorderには「命令」、「順序」、「順番」という意味があることもわかる。

「order」という英単語には「命令」「秩序」「順序」「順番」なんて意味がありますが、これは全部「秩序=あるべき姿が保たれている状態」だと理解すれば簡単にわかります。無作為ではなくABC・あいうえお・背ので並んでいれば秩序が保たれていますし、上の人が下の人に何かを命令するのはあるべき姿ですよね

西岡さんによれば、上の人が下の人に命令するのはあるべき姿なのだそうです。彼が塾を始めたら、塾講師は生徒に何かと命令をするのですね。彼が結婚して子供が生まれたら、父親として子供に何かと命令をし、それがあるべき姿と考えるのですね。彼は東大の経済学部を卒業したはずですが、近代経済学をちゃんと学んだのでしょうか? 統制経済や計画経済があるべき姿と東大で学んだのでしょうか? あるべき秩序には様々な形があります。秩序から命令は必ずしも導き出されません。

また、日常会話ではorderは「注文」という意味で一番よく使われます。可算化されると「注文した料理」という意味になります。日本語でも「ラストオーダーをお願いします。」と言うでしょう。英語だと Last orders now please! になりますが、「秩序」から「注文」という意味を類推するのは不可能です。西岡さんはなぜ「注文」という意味をスルーしたのでしょうか?

hungry お腹が空いている➡耐えて何かを待ち望む?

西岡壱誠─「飢餓感」という言葉を知っていれば、hungryは「お腹が空いている」という意味だけでなく、「耐えて何かを待ち望む」という意味もあることもわかる。

「hungry」という英単語は「お腹が空いている」状態を指しますが、「ハングリー精神」なんて日本語もあるように、「耐えて何かを待ち望む」といった意味もあります。どうして「お腹の状態」と「耐えて望む」という意味が一緒になるんだろうと疑問に思う人もいるかもしれません。でも、日本語の「飢餓感=飢えているからこそ、何かを渇望している状態」という言葉を知っていれば、これはすぐに理解できるはずです。お腹が空いているからこそ、何かを強く欲しがる。「渇望」という日本語でも、これは表現されていますよね。渇いているからこそ望んでいる、と。

hungryはbe hungry for Aやbe hungry to doの形で「強く欲して」を意味します。hungryに「耐えて」という意味合いは特にありません。例えば、Mr. Nishioka is hungry to learn. だと「西岡さんは学ぶことに貪欲だ」という意味になりますが、学ぶことが好きでたまらなかったら何も耐える必要はないでしょう。「お腹が空いている」という意味の英単語が「強く欲して」の意味もあるかどうかは、それこそ英語の事情であって、日本語とは何ら関係がありません。同じく「お腹が空いている」という意味のstarvingにはその意味はありません。

must すべきである➡こうなるだろう?

西岡壱誠─日本語の「義務」の意味を理解していれば、mustには「すべきである」以外にも「こうなるだろう」という意味があることがわかる。

文法だってそうです。例えばmustという助動詞を学ぶとき、「『義務』を示す助動詞だから『すべきである』だ!」と考えてしまっている人、多いのではないでしょうか。でも、そのまま「すべきである」と理解してしまっていたら「You must be hungry.」と言われたときに、意味がわからなくなってしまうのではないですか? 「お腹が空かなければならない、って何!?」と。「must」は確かに「義務」ですが、「義務」という日本語には「こうすべきだ」という意味だけではなく、一本の道を行くように予定調和として「こうなるだろう」というニュアンスもあります。だから「You must be hungry」は「お腹空いてるよな?」という意味になるのです。しかし、「義務」のニュアンスをあまりきちんと理解できていない人は、いつまで経っても「must」=「すべきである」という理解しかできないわけです。

日本語の「義務」には「一本の道を行くように予定調和として「こうなるだろう」というニュアンス」はありません。 「政府は貧困者を救う義務がある」と言ったら、「政府は貧困者を救うだろう」という意味も出てきますか? そんなわけはありません。逆に予定調和しないからこそ義務が必要となります。「義務」は英語ではobligationですが、obligationには予定調和の意味はありません。たしかにmustには「義務」以外にも「推量」の意味がありますが、「義務」の意味から「推量」の意味を引き出すことはできません。

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compromise 一緒に約束を結ぶ➡譲歩、折衷案、妥協?

西岡壱誠─compromiseの意味を知らなくても、日本語力があればcompromiseの意味を正しく推測できる。

日本語ができている人は、知らない単語の意味を「推測」する力にも優れています。みなさんは、自分がまったく知らない単語が出てきてしまったときに、試験会場や会話の場でどのように対応しますか? 例を挙げるなら、「compromise」という英単語の意味を知らなかったとして、どうしますか?実は日本語力のある人なら、辞書を見なくてもおおよその意味を類推することができます。まず、「compromise」って、切れ目を入れて2つに分けるとしたら、どこになるかわかりますか? 正解は、「com」と「promise」です。「promise」という英単語が、「約束」という意味だと知っている人は多いですよね。…では、もう一方の「com」がどういう意味かわかりますか? これは「合コン」とか「カンパニー」とか、そういう言葉で使われる「一緒」という意味の言葉です。では、「一緒に約束を結ぶ」ってどういう意味になるでしょう? これは、「お互いが譲り合って歩み寄る」というニュアンスになるので、「譲歩」とか「折衷案」とか「妥協」とか、そういう意味になります。これも、「折衷」とか「譲歩」とか「妥協」とか、そういう語彙や言葉の理解が追いついていないと理解できないものですが、逆に日本語力があれば類推できるはずです。

2つのオチがあります。第1に日本語力があっても、接頭辞のcom-の意味がわからないとcompromiseの意味を推測できません。compromiseの意味を知らない受験生は、接頭辞com-の意味を知らない受験生よりはるかに少ないかと思います。第2に「一緒に約束を結ぶ」から「譲歩」、「折衷」、「妥協」という意味を類推することはできません。彼氏と彼女が「明日、デートしようね」と約束する場面を思い浮かべて、そこから「譲歩」や「妥協」をイメージしますか? 約束事で譲歩・妥協するかどうかはケースバイケースです。com-の意味を知っていてもcompromiseが「妥協」の意味であると推測することはできません。

西岡壱誠さんの不思議な英語学習論

日本語力があっても多義語の意味を正しく推測することはできません。逆で考えてみましょう。日本語を学んでいるアメリカ人学生がいたとします。英語力がある方が日本語の習得が容易になりますか? 「hungryは日本語では”空腹”と言うんだな。hungryはeagerという意味もあるから、”空腹”にも”強く欲する”という意味があるに違いない。”私はプレステ5を空腹だ。”」なんてバカなことを考える方が日本語力はつきますか?

西岡さんのあげるstructure, order, hungry, must, compromiseの5つの例すべてにおいて、日本語力は多義語の意味を推測するのに全く役に立ちません。多義語の複数の意味は推測するのではなく、ひとつずつしっかり覚えていかないといけないわけです。「秩序」から「注文」や「命令」の意味を導き出すことはできないので、orderという単語を習得したければそれぞれの意味を一つずつ習得しましょう。西岡さんはこの当たり前のことを無視して、わけのわからない英語学習法を勧めています。彼によれば英語力をつける「すごく単純な、誰でもできるやり方」があり、それは「漢字の参考書を買って、難しい熟語を英語に訳すという勉強法」だそうです。

僕が東大に合格した友達から教えてもらって、浪人中ずっとやっていたのは、漢字の参考書を買って、難しい熟語を英語に訳すという勉強法でした。「秩序→order」「譲歩→compromise」というふうに、自分があまり意味を理解していない日本語を、あえて英語に訳す訓練をしたのです。

この勉強の過程で「自分は日本語の語彙力が本当にないんだな」と愕然とし、1から語彙力の勉強をやり直すようになりました。自分がいかに言葉を適当に使っているか、いかに日本語がなっていない状態で英語の勉強をしていたのかを思い知らされたのです。

困ったものです。英語がろくにできない人が思い付きで教育論を語り始めると、こういうおかしいことを言い始めるのでしょうか。この学習法で翻訳力は多少つくかもしれません。しかし、英語は翻訳ではありません。英文和訳でしか英語というものを理解できない人が思いつきそうなウソ話です。何がウソ話かというと、「東大に合格してから東大生に話を聞くと、(日本語の)語彙力の勉強は最初にやった」と語る学生が案外多くて」と言うのがウソ話です。英語力をつける一番の秘訣を英語に接することです。英語力をつけるために日本語の語彙力をつけようとするバカはそうたくさんはいません。「英語力がある人は日本語力も高い」という観察はおそらく正しいと思います。しかし、ここから「英語力をつけるためには日本語力を高めるべき」という主張は引き出されません。この2つの違いがわからないと以下の記事をお読みください。

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英単語は日本語をベースにして作られているわけではないので、英語の語感は西岡さんの言うような日本語の意味からではなく、日本語を忘れることによってのみ正しく習得することができます。だからある程度の英語力がついたら英英辞典を使って英単語の意味を調べるようにしましょう。西岡さんはこんなことも言っていますが、

また、「習慣」を訳そうとしたときに「habit」「custom」「manner」といろんな英語が出てきて、「habitが癖とか習慣」「customは慣例とか恒例とか、そういう意味か」「mannerは方法とかそういう訳になるのか」と、普段意識していなかった使い分けや、その言葉の根本的な意味に触れられたのもいい勉強になりました。

mannerに「習慣」という意味はありません。「習慣」という意味ではmannersで複数形になります。「habitが癖とか習慣」「customは慣例とか恒例とか、そういう意味か」という理解では、habitとcustomを正しく使えるようにはなりません。habitとcustomの意味と語法を習得するのに日本語力は特に必要ありません。中一程度の日本語力があればそれで十分です。

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西岡さんは「東大生が英語ができるのは、東大生は普段から日本語をきちんと意識して使っているので日本語のオーダー、ハングリー、プロミスから英語の「order」や「hungry」や「promise」の意味がわかり英語の語彙力がもともとあるから」といった適当なことも主張しています。Fラン大学の学生でもカタカナ日本語を使ってますよ。西岡さんは大学受験生が覚えるべき英単語は2000〜3000語程度とも言っていますが、そんなわけはないですからね。3000語程度の語彙力では一流大学に合格することはできません。英語はとにかく語彙力なのでトップ大学を目指す受験生は基本語1200語プラス4800語で計6千語の英単語を習得しましょう。

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