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ここがヘンだよ中田敦彦の「日本人はなぜ英語が話せないのか?」

お笑いタレントの中田敦彦さんがユーチューブに英語学習法についてのビデオをアップしていると聞いたのでさっそく視聴したのですが、トンデモビデオでした。中田さんは2本のビデオを公開しています。「【英語の授業①】日本人はなぜ英語が話せないのか?」と「【英語を話す②】中田の結論は英語字幕つきの会話動画をシャドーイング」です。

中田さんが英語学習法に関する本を5冊読んで、次の2冊の内容が気にいったそうです。

瀧靖之『脳が忘れない 英語の「超」勉強法』(青春出版社)と、
Cozy 『海外ドラマはたった350の単語でできている』(西東社)の2冊です。

では、彼の主張を見てみます。

目次

中田敦彦さんの主張

まず、中田さんは「英語ができない日本人」の対象を限定していることに注意してください。中学生や高校生は対象としていません。高卒の人も対象外です。彼のターゲットは中学・高校・大学で英語をしっかり勉強したはずなのに、大学卒業後も英語を話せない人たちです。受験英語は勉強しているので、英文法と最低限の英語の語彙力はすでにある人ですね。

「日本人は英語がなぜ話せないか?」中田さんによるとその理由は4つあるそうです。

順序が逆だった

大半の英語学習法では
単語→読む→書く→聞く→話す
で勉強すべきと主張しているけど、
聞く→話す→読む→書く→単語
の順序を英語を学習すべき。

単語量は少しの方が良かった

語彙力は必要でない。単語量は少しの方がよい。英単語はもう全部知っている。「海外ドラマはたった350の単語でできている」。アメリカのテレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』のセリフの80%がたった350語の英単語で話されている。90%でもたった2千語。それでも語彙力はあった方がいいのではないか?

中田さんは語彙力はない方が良いと断言します。なぜか? なまじ単語力があると選択肢が多いために早口英語のしゃべりについていけなくなるからだそうです。「私はなになにする」と言いたい場合、I willもあればI’m going toもあるけど、gonnaだけ使えればよい。アメリカ人はgonnaばかり使う。gonnaがよくある球とわかっていたらそれを受けられるが、それがわからないで、たくさんある英語の中でどれが投げられるかわからない状態で球を受けるから英語を聞き取れなくなる。だから省くのが大事。「すごい」もwonderfulやperfectなどいろんな言い方があるけど、awesomeと言えばよい。アメリカ人はいつもawesomeを使うから。単語力があってもどれが一番使われているか知らないとそれを投げれないし、受けることもできない。だから、英単語は「省け、増やさず、捨てろ」が大事。

教材が違っていた

英語の教材は英字新聞や英語ニュースではなく、映画・ドラマ・音楽を使おう。音声だけでは耳に入ってこないので必ず映像を使って英語学習をする。新聞やニュースの英語は客観的な事実を書いた文章だから会話がない。それに対して、映画やドラマや音楽の英語は主語がIとYouばかりで主観と感情を表している。これこそが会話の英語。ではこれらの教材を使ってどうやって英語学習をすべきなのか。中田さんは英語字幕のシャドーイングをしろと主張しています。

字幕付きの英語動画を視聴しながら、英語字幕を声に出して読むというのが中田式シャドーイングです。どの動画を見るべきかの基準は、①知らない英単語があまり出てこない、②会話形式、③自分に面白いもの、の3つ。動画はYouTubeで自分で見つけましょう。

中田さんが特にお勧めしている動画はNas Dailyです。イスラエルで生まれ育ち、ハーバード大学で経済学の学士号をとったNuseir Yassinさんが運営しているユーチューブサイトです。

目的が間違っていた

中田さんいわく、英語は手段であって目的ではない、だから英語ができるようになって何をやりたいか知っていないといけない。「英語を使って何をしたいか見つめる」、日本人はこれが薄い。中国人や韓国人は英語を手段としてみているから途中で燃え尽きずに英語を習得できる。英語はスポーツだ。まずはサッカーボールを蹴らないとサッカーはできない。英語を習得するためには、何のためにあなたは英語を喋りたいのかわからないといけない。

中田さんはこのように日本人が英語を話せない理由として4つをあげています。

  1. 順番が逆だった
  2. 単語量は少しの方がよかった
  3. 教材が違っていた
  4. 目的が違っていた

この4つに間違いがないと日本人でも英語を話せるようになるそうです。では、それぞれの主張の妥当性を確認してみます。

ここがヘンだよ中田さん

中田さん本人が監修していればこんな適当な内容のビデオは作らなかったでしょう。2流スタッフが作成したスクリプトをただ読んでいるだけなので、平気で矛盾したことを言ってしまうのかと思います。では彼の主張を1つずつ見てみます。

順番が逆だった➡順番は関係ない

中田さんは英語は
聞く→話す→読む→書く→単語
の順で学習すべきと言っていますが、そんなわけはありません。英単語の習得はあらゆる英語学習過程において生じます。英語を聞いていてわからない単語に出会ったら、その単語を再度聞いた時に理解できるようになるためにそこでその単語を覚えないといけません。聞く→話す→読む→書くという順序も間違いです。英語は総合的に学習するものです。スクリプトのあるリスニング教材であれば、最初に「読む」から初めて、その次に「聞く」というやり方もあります。中田さんが対象としている英語学習者はすでに小中高大学で英語を学んでいる人なので、その人たちが一番力がついていない「聞く」と「話す」を集中的に学習するのは何の問題もありません。しかし、英語学習者全般に対して、単語を覚える前にまずは英語を「聞け」というのは明らかに間違った学習法です。英語の学習時間は限られています。限られた学習時間を使って効率的に英語を学ぶための一番の秘訣は、同時に複数のことの習得を目指すことです。リスニング力とスピーキング力を同時に向上させる学習法、リーディング力をつけ、その書かれたものを聞いても聞き取れるリスニング力もつける学習法、そういった英語学習法の方がより効率的であり、効果的です。英語学習に順番なんてありません。

単語量は少しの方がよかった➡英語は語彙力がとても大事

中田さんによれば、『セックス・アンド・ザ・シティ』のセリフの9割は2千語の英単語が用いられているそうです。本当にそうなのか確認してみました。Sex and the CityのSeason 1は全12話ありますが、そのスクリプトはネットで簡単に手に入ります。そこでシーズン1のスクリプトの34,102ワードを「英単語カウンター」でチェックしたら、3,971ワードが抽出されました(ただし数字もワード数にカウントされています)。

3,971ワードをマスターしていれば『セックス・アンド・ザ・シティ』のセリフをすべて理解できるということになりますが、他の英語ではまた違った英単語が出てくるので、英語ドラマを理解するのに必要なボキャブラリー数はどう考えても1万ワード以上になります。「単語量は少しの方がよい」というのはただのでたらめなわけです。むろん、中田さんの言うように、セリフの9割は2千語程度でおさまるでしょう。でも、意味がわからない英単語が1割もあったらセリフの意味をろくに理解できません。

ためしに「セックス・アンド・ザ・シティ」(全12回)に3回以上出た英単語(太字)が含まれる以下の英文の意味を推測してみてください。

Plus, they have cute butts.

How pathetic do I feel asking you if a guy kinda likes me?

You know you’re a whore.

I’ve been in a monogamous relationship for over a year.

butts(お尻), pathetic(日本語にはない表現なので英英辞典で意味を調べてね), whore(売春婦)は受験英語では習いませんが、口語ではよく使われる単語です。monogamousは「一夫一婦の」という意味です。buttsは映像を見ながらお尻のことだと推測できますが、ほかの単語はもともと知っていないと意味を推測するのは困難です。

「セックス・アンド・ザ・シティ」(全12回)に2回以上出た英単語(太字)が含まれる英文もいくつか見てみましょう。

That afternoon I dragged my poor tortured soul out to lunch with Stanford Blatch,

As Samantha went on about her sexual escapades, I glanced at my arm.

I’ll do my best.
Groovy.

Wall Street honcho seeks two horny gals for a fuck-fest at my summer home.

It’s a miracle, I’m healed! You’re free to go work with the lepers now.

She yearned for the time when dinner was followed by dessert, not lubricant.

I think you’re luminous.
You think I’m luminous?
Totally.

Thank God. Who needs the trouble?
No muss, no fuss.

The truth is, I’m totally neurotic.

I don’t like putting it in my mouth. It makes me want to puke.

That afternoon Samantha successfully screwed a guy in under two minutes.

Charlotte treated marriage like a sorority she was desperately hoping to pledge.

– An ex-wife, that’s a new twist.
– And they had wild sex, threesomes.

どれだけの英文の意味を推測できたでしょうか?

350語程度の英単語を習得していれば『セックス・アンド・ザ・シティ』のセリフを理解できるという人の頭の構造を理解するのは到底困難です。中田さんはシットコムの『フレンズ』も勧めていますが、このドラマはスラング多いのであまり良い教材とは言えません。

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中田さんはスピーキングとリスニングで必要とされる語彙力の圧倒的な違いについてよく理解できていないようです。「吐く」を英語で言いたいときはpukeの1語さえ覚えていればスピーキングでは特に困りません。でも語彙力豊富なアメリカ人(アメリカ人は20歳の時点で平均4万2千語の語彙力を持ちます)がいつもこの意味でpukeという単語を使うわけではないので、リスニングのための語彙力はスピーキングのための語彙力の数倍必要となります。日本人でもthrow upとvomitの2語は追加で覚える必要があるでしょう。中田さんは英文法についても不理解で、「関係代名詞なんて口語で使ったことねえな。」と言っていますが、そんなわけはありません。『セックス・アンド・ザ・シティ』にも関係代名詞はよく出てきます。シーズン1の第2回エピソードだけでも関係代名詞whoが12回出てきます。アメリカでは小学一年生でも関係代名詞を使って会話をします。

She was the date of Nick Waxler, a fairly successful sports agent
who once told her she had nice legs.

Can’t you find a woman who can carry on a decent conversation?

They’re a step beyond womanizers who will sleep with just about
anything in a skirt.

Modelizers are obsessed not with women, but with models who in most cities are safely confined to billboards and magazines…

I’m like a model who‘s taken the high road.

Barkley, a notorious modelizer, was one of those SoHo wonders
who maintained a fabulous lifestyle despite never having sold
a single painting.

I believe there is a curse put on the head of anybody who tries to
fix up their friends.

She was one of the only people I knew who thought that proximity to beauty made her feel more attractive.

Well, I’m working on a story about men who date models.

I felt like I was in my bedroom when I was 16, and I used to hang out with this guy who was really beautiful and my parents thought I was helping him with his chemistry homework.

I began to realize that being beautiful is like having a rent-controlled apartment overlooking the park: completely unfair
and usually bestowed upon those who deserve it least.

But I’ve been thinking about your article about men who date models.

教材が違っていた➡中田さんのやり方でもダメ

中田さんは言ったその数秒後にはそれを否定するようなことを言うのですが、最初に「映画・ドラマ・音楽」を視聴しようと言っておきながらお勧めなのはユーチューブのNas Daily。しかし、Nas DailyはNuseir Yassinが個人で発信しているサイトだからその内容はむしろ「英語ニュース」に近いです。彼は客観的なレポートをしようとしているので主語がIのセリフも少ないです。「映画・ドラマ」の要素はゼロです。会話もほとんどありません。また彼が勧めているのはNas Dailyに出てくる英語字幕を声に出して読むことですが、それはシャドーイングではありません。ただのリーディングです。リーディング学習を否定した中田さんが何でリーディングを勧めているのですか?

目的が違っていた➡目的を変えてもできないものはできない

中田さんによれば日本人は中国人や韓国人に比べて英語を使って何をしたいかわかっていないそうです。そんなことがありますか。英語学習者の誰もが自分が英語を使えるようになった時の肯定イメージをもって英語を学んでいます。中田さんはまた、英語はスポーツだとも言っていますが、スポーツはそれをプレイして楽しむこと自体が目的の人も多いので、それだと英語が手段ではなくなります。「英語は手段」だったら英語はスポーツではなくなります。言った5秒後には前言を翻すのが中田式講義のようです。

間違った英語学習法に惑わされないために

読んでばかりいるから日本人は英語ができないと主張しているにもかかわらず、動画の英語字幕を声に出して読めば英語ができるようになると真逆のことを言う中田さんのこのビデオは見るべき価値がほとんどないのですが、今後も似たようなクオリティの低い英語学習法のユーチューブが繰り返し公開されるでしょう。

その内容は異なっても英会話ビジネスというのはどれも似たところがあります。特に以下のことを言っていたら要注意です。
①「これ」をやれば英語が喋れるようになるという一点突破型
②インプット力の重要性を無視
③好きなことをやればいつのまにかできるようになる

「これ」をやれば英語が喋れるようになるという一点突破型

英語は総合力です。何か一つにだけ焦点を当てた勉強法は必ず間違っています。中田さんの「好きなユーチューブビデオの英語字幕を読め」というのは、そのユーチューブビデオについては詳しくなれるくらいの効用しか期待できません。中田さんは聞こえてくる英語を真似したら英語の発音が正しくなると思っているようですが、[ʃ]と[s]の発音の違いがわからない人はいくらリスニングをしてもshe[ʃiː]とsee[siː] が同じように聞こえます。英語を繰り返しリスニングをしていたら自然とrice[raɪs]がlice[laɪs]とは違って聞こえてくることもありません。英文法も大事でないわけがありません。「英語は総合力」というのは複数のことをやらないと英語は習得できないということです。

インプット力の重要性を無視

話す・聞く・読む・書くの4つをどう2分するかではその人の英語学習法の信憑性が簡単に判断できます。中田さんのように、①話すと聞く、②読むと書くで区別する人の言うことは信用しない方がいいです。まともな英語教員は誰もがインプットとアウトプットの違いに注目して、①読むと聞く、②話すと書くの2つに分けます。中田さんは終始読む力の向上の必要性を過小評価しているのですが、インプット能力が低ければアウトプットは絶対できません。リーディングとリスニングというインプット能力はそれだけの向上を目指すことができますが、スピーキングとライティングはすでにインプット力があることを前提とします。「僕は英語の本を読めないけど日常会話は得意」というのはあり得ないということです(逆に「英語の専門書をスラスラ読めるけど日常英会話は不得意」という人は数多くいます)。またスピーキングは相手がいることを前提としたうえでのコミュニケーションなので、リスニング力がついていないとスピーキング力は向上しません。「読めるけど話せない」という人はいるけど、「話せるけど聞けない」、「話せるけど読めない」という人はいないわけです。「話せる」ようになるためには、読めるようになり、かつ聞けるようにならないといけません。だから、「英語が話せるようになりたい」という人はリーディングとリスニングのインプット能力の向上も図ってください。

好きなことをやればいつのまにかできるようになる

中田さんは「なんでもいいから自分の気に入ったユーチューブビデオをただ視聴しろ」と言っていますが、それで本当に当人にとっての必要な英語力がつくかどうかはまったくわかりません。例えば、私はアメフトが大好きなので毎年9月からは英語でNFLを観戦しています。だからアメフトに特有の英語については詳しいです。でもそれはアメフトを視聴するのには役立ちますが、その英語がアメフトの試合以外で使われることはないので、「アメフトをずっと見ていたら突然英語がペラペラしゃべれるようになった」ということは絶対起こりません。中田さんが勧めているのはNas Dailyです。Nas Dailyで特に視聴者数の多い
Most Depressing Country 2019/09/30
How This Guy Cleaned a Lake! 2019/08/12
He is the Real Tarzan! 2019/10/01
の3本を私も見ましたが、「たった350の単語でできている」というのはこのビデオにおいても真っ赤なウソでした。

たった3本のビデオなのに総単語数468語です。千本以上あるこのサイトのビデオの総単語数をチェックしたらすごい単語数になりそうです。特に多く出てくる英単語は

1. the (49)
2. and (47)
3. is (35)
4. a (32)
5. this (26)
6. to (25)
7. of (24)
8. you (23)
9. I (18)
10. in (18)

中田さんはあれだけ繰り返し主観を表現した英語に接しろと言っていたのに、Nas Dailyでは主観的主張が少なく客観的な事情説明に徹しているのでyouとIがそこまで多くは出てきません。このビデオは割と平易な英単語が多いというのは正しいのですが、それでも3つのビデオにはcontaminated , nanotechnology, depressing, pollution, afloat, bam, bio-filters, dedicated, environment, float, funding, garbage, habitat, hardship, orchestrated, parasite, particle, patented, polluted, prosperous, Quran, tradition, transformation, transmitter, trapped, wetlandという単語が出てきます。大学受験レベルの英単語力が必要となるわけです。

中田さんがどれだけNas Dailyを視聴して、必死に英語字幕を朗読しても、それで彼がペラペラ英語をしゃべれるようになることはありません。「自分の関心があるものだったらなんでもいいから」ではだめです。英語学習の目的をしっかり認識して、ゴールに最短時間で到達できるための手段は何かしっかり考えないと「英語を勉強している」が自己目的化してしまいます。効率性を無視してはだめです。効率性を重視するからこそ教材というのは存在します。英語力の低い人が自分に適切な英語教材はどれか判断するのは難しいです。そのため適切な指導者がいることは大事です。中田さんは自分が英語を話せない人なので、彼のビデオを見て英語学習をしても全く英語ができるようにならないという人が続出しても何の罪悪感も感じないでしょう。そもそも罪悪感が備わっていたらこんなビデオを公開することもなかったかと思います。

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