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テレビドラマ英語学習法のメリットとデメリット

会議通訳者の高松珠子さんのBLOGOS記事が面白いです。

アントニオ猪木の「元気ですかー!」は、どうやって英語に訳すのか?-会議通訳者・高松珠子氏インタビュー(前編)

英語をマスターするというのは“大きな図書館の鍵”を受け取ること-会議通訳者・高松珠子氏インタビュー(後編)

目次

同時通訳について

当然のことながら同時通訳者の英語力はハンパないです。日本語・英語共に一般の人よりも上のレベルの語学力があることを前提としています。逆に英語の先生というのは大した英語力がなくてもできる仕事です。英語の先生は英語ができない人を相手にします。だから英語を話す必要もなければ英語でエッセイを書く必要もありません。どだい仕事中朝から夕方までずっと日本語使っていて、中学や高校の英語の先生が英語ができるようになるわけがありません。実は彼らに英語を教える教育大学の英語担当教授の多くも英語をまともに使えません。「教える」という職業はできない人を対象にした仕事ですからまがい物がよくまぎれます。

通訳者はできる人にしかできない職業です。通訳の仕事の中でも最も難しいのが会議通訳であり、同時通訳です。会議通訳者は会議があるたびに新たなトピックに挑戦して同時通訳します。サイマル・インターナショナル(有名な通訳・翻訳サービス会社)で会議通訳していた女性に、なんでそんなことが可能か、尋ねたことがあります。ボキャブラリーが豊富な人でも各専門分野の専門用語すべてに精通しているわけではありませんから。彼女の返事はこんな感じでした。

「そりゃあ大変ですよ。会議の前日は専門用語を1000語以上覚えないといけないし」

1日に1000語覚えるって…。

その時はウソだと思いました。今は、私も毎日お風呂に入っているときに25分位で40語くらいの英単語を覚えていますから、「30分40語として1時間80語、13時間で1000語超えるから不可能な数字ではないな」くらいに思っていますが。

ちなみにこれは短期記憶です。短期記憶は一週間後にはほとんど記憶に残りません。その彼女も会議が終わったら覚えたものはほとんど忘れると言っていました。短期記憶を長期記憶に変えるには繰り返し覚え直す必要があります。

ところでこの女性は30代の時に不慮の事故で亡くなりました。帰国子女で上智大学卒業後にすぐにサイマルに入社して20代でトップの会議通訳者として活躍していました。久米宏のニュースステーションで同時通訳をすることもよくありました。今も生きていたら、同時通訳と言えば彼女か高松さんか、って感じになっていたでしょうね。

閑話休題

高松式テレビドラマ学習法

高松さんの以下の英語学習法を勧めています。

私のお勧めの勉強法は、英語のテレビ番組を見ることです。映画よりもテレビドラマのシリーズがお勧めです。私は責任ある立場の方に会うたびにお願いしているのですが、法律を変えてでも、英語の番組を放送する際には英語のテロップを流すことを義務付けてもらいたいと考えています。今、私の家はケーブルテレビに入っているのですが、バイリンガルの放送はやっていてもテロップは日本語だけなんですね。英語を聞きながら、日本語を読んでも何の意味もありません。言葉と音が一致することによって勉強になるんです。

欧米では、元々難聴者のためのテロップが存在するのですが、調査したところ、実際にこのテロップを見ているのは難聴者の方よりも移民が多かったそうです。移民の方々が語学取得のために使っているということです。日本人は中学から英語を勉強していて、たくさんボキャブラリーを持っていますから、ちょっと耳の慣れが必要なだけで、読みながら音を確認していけば、どんどん上達するはずです。

字幕があっても、どうしてもスピードが速くて聞き取れないとか、きちんと読みたいと思ったら、番組の名前とscript、脚本といれて検索すれば、脚本がアップされていたりしますから、そういうものをダウンロードしてみればよいでしょう。

なぜ私が、テレビのシリーズものを勧めるかというと、映画の場合、背景知識や時代設定、各登場人物の情報を知るために時間を使いすぎてしまうからです。テレビシリーズであれば1回で終わって、後はストーリーが進んでいくだけですから、楽だと思います。最初の2~3回は、脚本をダウンロードして、登場人物がどういう人で、どういう社会的地位にいるのかといった設定を飲み込んでしまえば、後はだんだん脚本に頼らず、見ることができるようになると思います。

また、テレビシリーズにはたくさんの番組があるので、好きなものが選べます。弁護士モノやホワイトハウスが舞台のドラマであれば、ハーバードを出た人たちが機関銃のようなスピードで難しい言葉を話しますし、「ゴシップ・ガール」とか、高校生や若い女性向けの話であれば、もう少しやわらかい英語を聞くことができます。やはり、先生が押し付けで「これを見なさい」というのではなくて、自分の好きなものを選ぶのが一番です。最終的には自分の好奇心、「これ何と言っているのか知りたい」というところから、学びが始まると思うので。

要点をまとめると、

①英語のテレビ番組を字幕付きで見る
②映画よりもテレビドラマを見る方がよい。

難聴者のテロップというのはClosed Captionのことです。略してCCと呼ばれます。アメリカのテレビはすべてこのCC機能がついています。政府が義務化しているからです。CCはSubtitle (字幕)とは微妙に違います。Subtitleは必ずしもセリフを忠実に載せません。セリフが長ければ多少端折ったりします。それに対してCCはセリフを忠実に字幕に載せます。北米で市販されているDVDを購入するとその多くでSubtitleとClosed Captionの2つの字幕が出るのがわかります。英語学習者にとってはCCの方が役に立ちます。

私も映画よりもテレビドラマの方が英語学習の教材としてははるかに適当であると思います。ただしそれは「背景知識や時代設定、各登場人物の情報を知るために時間を使いすぎてしまうから」ではありません。そういったことはどうでもいい事です。映画が英語学習にいまいちなのは無声の場面が多いことです。役者がずっとしゃべり続けてくれた方が効率的に英語を学べますが、映画よりもテレビドラマの方がはるかに1分当たりのセリフ数が多いです。英語学習のために視聴するのであれば何度も繰り返してみないといけなくなりますが、無声の場面を繰り返しボケーと見ているのはかなりつらいです。時間の浪費です。

ただしテレビドラマの視聴も注意点があります。TOEIC900点以上取る人でもそのほとんどがテレビドラマの英語をよく聞き取れません。英語学習者に一番人気のテレビドラマはシットコムのフレンズ (Friends)ですが、ネイティブ以外は聞くことのないスラング満載です。スラングなんてものはそれこそTOEIC950点以上取れたらぼちぼち知ってもいいよといったもので、重要なものから習得するという鉄則に従えば、英語のテレビドラマにはまってひたすらスラングを覚えるといった英語学習はぜったいやってはいけません(私は趣味で英語スラングを覚えていますが、実際に使うことはありません)。

英語のスラングの多さというのは本当に尋常ではありません。例えば、アルクの英辞郎で「売春婦」の英訳を確認してみてください。91出てきます。アメリカのテレビドラマで「売春婦」に相当するスラングが出てきて、「おー、アメリカ人は売春婦のことをそう言うんだ。」と思ってその単語を覚えても、それは100近くあるスラングの中の一つにすぎないわけです。

imbecile, sap, chump, goon, dingbat, goof, cretin, bonehead, lunkhead, meatball, dimwit, dork, ignoramus, dildo, dunderhead, blubberhead

の中で意味の分かる英単語はいくつありますか? すべて「ばか」という意味のスラングです。私はアメリカのドラマや、The SimpsonsやSouth Parkといったアニメを見てこれらの英単語を覚えましたが、こういったスラングはTOEICやTOEFLの試験に出てくることもなければ、読書やインターネット記事を読んで出てくることもなけば、ネイティブが非ネイティブの日本人相手に使うこともありません。でもアメリカ人が国内向けに作った映画やTVドラマを聞き取れるようになるためにはこういったスラングを習得する必要があります。それは時間の無駄かと思います。

じゃあどうすればよいかというと、
①スラングがあまり出てこないドラマを視聴する
②ドラマ以外のものを視聴する
の2つの方策が考えられます。

スラングがあまり出てこないTVドラマを視聴する

わたしはあんまりドラマを見ないのでどのTVドラマがスラングが少ないかよくわかりません。すっ、すいませんm(_ _)m。ひとつ言えることは、古い時代に制作されたドラマはスラングが少ないことです。『奥さまは魔女』(Bewitched)とかお勧めですね。

Bewitched: The Complete Series

アマゾンでDVDを個人輸入できます。DVD22本、計107時間20分で2019年4月2日現在で$26.07。やっ、安い!!

ドラマ以外のものを視聴する

ニュースやドキュメンタリー番組ではスラングが出ません。アニメもThe SimpsonsやSouth Parkみたいな大人向けでなければスラングがほとんどでません。一番のお勧めは日本のアニメの英語版です。日本が舞台背景になっているので自分が表現したいセリフが満載です。慶應義塾大学教授だった鈴木孝夫氏が力説していたことですが、発信する英語を目指すのであれば舞台が日本国内である教材を使うべきです。例えば、英語のドラマをいくら見ても外国人に日本の習慣を説明するために必要な英語力は身に付きません。

ただしアニメDVDには1つ重大な問題点があります。ジブリのアニメDVD以外はちゃんとした英語字幕がついていないことです。アメリカでジブリアニメはディズニーが配給しているので、ジブリアニメのDVDはどれも文句なしに信頼できます。大学受験英語対策講座でも例文にジブリのアニメセリフをメインに収録しているのは、ジブリDVDはCCが収録されているのでリスニング学習にも使えるからです。

ジブリ以外の英語版日本アニメで正確なCCがついているDVDは数えるほどしかありません。フルーツバスケット、ポケモン(インディゴリーグ)、鉄腕アトムは数少ない正確な字幕付きDVDです。興味のある方はAmazon.comで個人輸入してください。北米版DVDの視聴法についてはhttps://www.sanctio.net/learning-method/ を確認してください。

Fruits Basket: The Complete Series

Pokemon: Season 1 – Indigo League – The Complete Collection

Astro Boy – The Complete Series

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