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英語教員に英語力は必要か

目次

英語教員の英語力

文部科学省が発表した「平成28年度「英語教育実施状況調査」の結果について」の調査項目には英語担当教員の英語力も含まれています。この調査によると、調査対象の中学校の英語担当教員29,936人のうち、英検、TOEFL、TOEICのいずれかの試験を受けたことのある教員は22,079人。この22,079人の中で英検準1級、TOEFL─PBT550点以上、CBT213点以上、iBT80点以上、TOEIC730点以上のいずれかだった教員の数は9,207人。これらの試験を受けていないが同等以上の英語力があることが確認された教員数は384人。高校の英語担当の教員の場合は、23,379人中、18,485人がこれらの試験を受け、英検準1級、TOEFL─PBT550点以上、CBT213点以上、iBT80点以上、TOEIC730点以上のいずれかだった教員数は14,268人。これらの試験を受けていないが同等以上の英語力があることが確認された教員数は280人。

英語検定試験を受けていない教員の英語力を正確に推測するのは困難ですが、非受験者は英語力が低いためそれがばれるのを嫌がって試験を受けなかったと仮定すると、英検準一級程度以上の英語力を有する英語教員の割合は、中学校の場合は(9207+384)/22079=32.0%、高校の場合は(14268+280)/23379=62.2%
となります。つまり、68%の中学校英語教員と37.8%の高校英語教員は英検準一級レベルの英語力を有しないまま、生徒に英語を教えているというわけです。京都府で行われた調査では、TOEICを受けた中学校英語教員74人のうち、英検準1級に相当する730点以上を獲得したのはたったの16人だったという悲惨な調査もあります(京都公立中学の英語教員: TOEIC578点)

中学高校の英語のクラスで英語力の低い教員に当たる生徒はかわいそうです。。。。

ちょっと待って!!

本当にかわいそうなのでしょうか。京都府の英語教員に関する記事を読んだ方がこう発言していました。

英語を教える教師なんだから英語のプロだろ!というのはちょっと言い過ぎだと思います。中学英語教師は、中学生に対して文部科学省が定める中学校学習指導要領の範囲で英語を教えるプロです。そして、TOEICのスコアでは到底測れない”中学生に教える能力やノウハウ”をお持ちのはずです。あえて言うなら教師力?ほとんど英語の事を知らない中学生に対して教えていくということは、もはや英語とは関係ないレベルの話です。英語のプロだから中学英語教師をやっているわけではないし、中学英語教師だから英語のプロだということでもないということです。

中学・高校の英語教員の英語力が低いと何が困るのでしょうか。以下、その理由を検討します。

英語の先生が英語ができなくてもかまわない説

地元の進学塾で中学生に英語を教えるバイトをしたことがありますが、進学塾の英語担当の先生の英語力はとてつもなく…

低かったです。

ネイティブの人が突然教室を訪れたら、英語でコミュニケーションをとれないことが生徒にばれるのが恥ずかしくてパニックに陥るレベルの英語力です。でも普通に英語を教えていたし、下手な発音で教えているということ以外にはとくに問題があったようには見えませんでした。少なくとも私よりもは授業がうまかったです。自分はその人たちよりもははるかに英語力は高かったはずですが、それが活かせたのは、英文を読ませたときに彼らよりも正確に発音ができたということくらいでした。塾でプリントを渡されて、授業中に30人近くいる生徒に問題を解かせて、解答の説明をする。この繰り返しです。自分の英語力を授業で活かす機会もないまま、自主的にフェードアウトしました。中学生相手の一方通行的な授業であれば教師の英語力はそんなに重要でないと感じました。そりゃあ英語力はあった方がよいですよ。でも「中学生に教える能力やノウハウ」を知っている方がはるかに大事です。ということで、「英語教員に英語力は必要か」という問いの答えは、必要といえば必要だけど必要不可欠というわけでもない、となりそうですが、中学と高校時代に英語力の低い教員から英語を習った自分としては、やっぱり英語の先生は英語があった方が助かったという感想を持ってしまいます。以下、「なんで英語の先生は英語力があった方がいいの?」の返答です。ここで英語力のない英語教員とは

外国人と英語でコミュニケーションをとれない
英書をコンスタントに読んでいない
英語のドラマや映画を視聴してもほとんど英語を聞き取れない
英語でEメールをろくに書けない、

という四重苦に悩む(悩んでないかもしれませんが)英語教員のことを指します。ちなみにこれでもECCジュニアの英語教員になれます。ECCジュニアのホームティーチャー募集のサイトには中学レベルの英語力があればオーケーとしっかり書かれています。

以下、英語ができない教員から英語を習って残念なことです。

英語の先生はやっぱり英語ができた方がよい説

(1) 発音指導ができない

日本人の生徒にbとv、rとlの違いを理解・習得させるのは困難だとしても、sinkとthink、walkとwork、sheとseeの違いさえも授業で説明しない英語教員に当たった生徒は悲惨すぎます。英語学習は初歩の段階から、英語を正確に発音し、しっかり発音指導できる先生から習うべきです。

(2) 冠詞の使い方を教えることができない

英語の不得手な教員がとくに無視しがちなのは第一に発音、次が冠詞です。準一級程度の英語力でも中高生に英文法を教えることはできます。しかし、英文法だけはしっかり教えているはずの英語の先生が冠詞を正しく使うことができず、生徒に教えることもできないというのはよくあることのようです。冠詞というのは理屈だけで習得しようとしても困難です。毎回の授業で、なぜこの名詞にはtheがつくのか、theをつけずに名詞を複数形にしたら間違いになるのか、間違いでない場合はどう意味が変わるのか、といったことを繰り返し説明して生徒に語感を習得させる必要があります。スピーキング重視の英語授業方針に反対して文法の重要性を説く英語教員が冠詞は無視するというのは笑止千万と言えます。

(3) 英文の間違いがわからない

英文解釈の授業で陥りがちなのが、「ネイティブは英語を間違えない、ネイティブは悪文を書かない」と信じて必死で英文を理解しようとすることです。いろんな意味にとれる悪文に出会った場合でも著者が言わんとしていることを解釈することは可能ですが、その場合は、①複数の解釈を許すこと、②もっとわかりやすく英文に書きなおすこと、の2つの作業が必要となります。しかし、日本語では悪文に見慣れているのに、英語に関してはネイティブは書き間違えることはないと仮定し、悪文がなぜ悪文か説明しない(というよりも「できない」)英語教師が数多くいます。わかりにくい英文を英文解釈の教材に使うこと自体は否定しませんが、その場合は、単に英文の意味を理解しようとするだけでなく、もっと平明でわかりやすく表現するにはどうすればよいか生徒に説明しないといけません。しかし十分な英語力がないとそれができません。

(4) 実際の英語と教科書に出てくる英語の違いがわからない

英語の教科書は進路に合わせて英文が作成されているのでとくに中学の英語教科書には不自然な英文がよく出てきます。詳しくはマーク・ピーターセン著『日本人の英語はなぜ間違うのか?』を読んでほしいのですが、例えば、中学では仮定法を習わないので、仮定法が使われるべき箇所では①その文自体を削除するか、②直説法を使い英文を間違えるか、のいずれかが行わています。英語教員がそれをわかった上で中学教科書を使うのであればまだよいのですが、英語力が低い教員は、教科書でどう本来の英語がデフォルメされているかわからないので、教科書に出てくる英文を100%正しいものと「仮定」せざるを得なくなり、間違った英語をそのまま生徒に教えることになります。要するに教師が教科書を正しく理解できていないまま生徒に英語を教える状況が生まれるわけです。その対策として本来あるべき英文を記したアンチョコを作成して英語教員に持たせてほしいものです。

(5) ライティングの指導ができない

文法的な間違いをせずに和文英訳できる英語教員はそれなりにいるかもしれませんが、ほとんどの英語教員は日本語の介入なしに英語で考え、長文の英語を書くという経験をしたことがないので、シンプルでわかりやすい英文を書くコツを知りません。例えば、重文は複文にする、受動態はできるだけ使わない、andを文頭に使わない、移行句をしっかり使う、セミコロンとコロンを使いこなす、といった英語ライティングの基本を知らない。これだと生徒に適切なライティング指導をすることは難しいでしょう。

(6) ボキャブラリーが貧困すぎる

大学受験に必要な英語ボキャブラリーは5,000語程度です。 さらに完璧にしようとしてもプラス3,000語で8,000語ほどのボキャブラリーを習得すれば大学受験では完璧と言えます。大学受験の指導をする高校英語教員はこれらの英単語は習得しています。問題となるのは、受験英語ばかり扱っていると、受験英語ボキャブラリーの特殊性を理解できなくなることです。受験英語で出ないのはまずはスラング。これは習わなくてもかまいません。アメリカの映画やTVドラマを理解するためにはスラングも理解できるようにならないといけませんが、日本人が英語を使うときにスラングを使う必要はありません。「ばか」はfoolとidiotとstupidくらいを覚えておけばいいわけで、jerk, moron, donkey, imbecile, sap, chump, goon, dingbat, goof, cretin, bonehead, lunkhead, meatball, dimwit, dork, ignoramus、dildo, dunderhead, blubberheadまで覚える必要はありません。次にスラングではないアメリカ特有の、イギリス特有の、オーストラリア特有の日常語というものも受験英語では習いません。例えばアメリカでは「トイレ」はrestroom、「ワンルームアパート」はstudioと言いますが、こういうイギリスでは使わないアメリカ英語(アメリカでは使わないイギリス英語も)を習うことはほとんどありません。また日本の学校で習うのは話し手と聞き手がいるコミュニケーションとしての英語です。だから独り言を言う時に必要なボキャブラリーがかなり不足します。このためネイティブの子供であれば当然知っている英単語の多くを日本の中高校では習いません。ネイティブのアメリカ人は英語をコミュニケーションの道具としてだけでなく、何かを考えるときに常に英語を使っています。英語ができないと考えることさえできなくなります。それに対して日本人はコミュニケーションの道具としてしか英語を使わないので英語で思考するために必要なボキャブラリーに欠けることになります。例えば、ネイティブの子供は自分の体で目立つものをすべて英語で言えますが、ほとんどの日本の高校生は「にきび」や「しみ」や「ふくらはぎ」を英語で言えません。最後に、日本の受験英語では当然のごとく、試験に出ない題目に関する英単語を習いません。「売春」はprostitution、「売春婦」はprostitute、「売春宿」はbrothel。ネイティブであればだれでも知っている英単語ですが、これらの単語を知っている大学受験生はあまりいないでしょう。だって、買春に関する問題が大学入試に出ることはないですから。要するに何を言いたいかというと、大学受験レベルをはるかに超えたボキャブラリー力をつけないと、受験英語に出てくるボキャブラリーの特殊性を相対的に理解できないということです。こういったことを考えると、やはり中学校・高校の英語の先生もしっかり英語力をつけるべきです。

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