英文法

場所を表わす前置詞の使い分け

※『例文で英単語を4800語覚える』講座受講生を対象としたサブノートです。 テキストは旺文社の『表現のための実践ロイヤル英文法』を使用。「第13章 前置詞」の「148 場所を示す前置詞」(pp.303-311)を熟読してください。

場所を示す前置詞atとinとonの違いに注目

「(場所)で」の「で」は、その場所が広がりをもたない地点だとat、場所が面として認識されるとat、広がりがある場所だったり、何かの中でという場合はinを用います。それぞれ一次元、二次元、三次元的視点と言えます。

寝込んでいるハウルが「荒地の魔女が僕の家を探しているんだ。」と言うと、ソフィーが「 えっ。あっ、港で手下を見かけたわ。 」と返答します。

“The Witch of the Waste is trying to find my castle.” “I saw her henchmen at the harbor.” 

the Witch of the Waste=荒地の魔女; castle=城
henchman (複 henchmen)=悪党の忠実な子分

ここで「港」は広がりをイメージせずに「ある地点」として認識されているのでin the harborではなく、at the harborと表現されています。

【例文】My father contracted polio on a troop train in Korea. ─David Alan Grief

「私の父は韓国の軍隊列車でポリオにかかった。」 デヴィッド・アラン・グリアはアメリカのコメディアンです。in a troop trainではなく、on a troop trainとなっているのが面白いです。「軍隊列車の中で」 という意味合いだとinになりますが、「中で」というイメージが薄いとonを使ってもかまいません。ただしこの文では後にin Koreaと続くので「in A in B」とinが連続して続くのを避けるために、「on A in B」と表現したのかもしれません。

最後に前置詞inを見てみます。『千と千尋の神隠し』での場面です。

千尋のお父さん「門みたいだね。」
千尋のお母さん「あなた、戻りましょう、あなた。」

“It looks like an entrance.” “Honey, get back in the car. We’re going to be late.”

英語版では「門」が「入口(entrance)」に変わり、「遅れるわ (We’re going to be late)」という表現が追加されています。ここで千尋のお母さんは「車の中に」戻るよう言っているのでin the carと表現されています。

『紅の豚』でポルコが行方不明になったと勘違いしているジーナにポルコは電話をかけます。そこでジーナが「イタリアにいるの? バカじゃないの! イタリア人があんたに逮捕状を出しているの忘れたの?」と言います。

You’re in Italy? You idiot! The Italians have a warrant out for your arrest, remember?

idiot=a stupid person
the Italians=イタリア人; warrant=令状; arrest=逮捕

ちなみに日本語版の『紅の豚』にはこういうセリフはありません。ここでイタリアは広がりのある場所として認識されているのでin Italyと表現されています。ここでat Italyやon Italyと言うことはありません。

上下を示す前置詞

「~の上に」という意味で最初に思い浮かべる前置詞はonという人が多いでしょうが、onは「~の表面に接して」という意味なので、「~の下に」あっても面に接している限り、onを使います。「天井にハエがとまっていたら」There is a fly on the ceiling. です。

キキが森の中にあるウルスラの家を尋ねます。「ごめんくださーい」天井の上からウルスラが「ハーイ。いま手が離せないの」

“Anybody? Hello? Anybody here?” “Yes! Stop shouting! I’m on the roof! What do you want?”

shout=叫ぶ

英語版では「すいません、誰かいませんか?」「いますよ! 大きな声を出すのはやめて! 屋根の上にいるよ! 何か用?」という意味のセリフに変わっています。このように「屋根の上」はon the roofになります。

「上方に」はabove、「下方に」はbelowです。

A successful individual typically sets his next goal somewhat but not too much above his last achievement. ─Kurt Lewin

「成功した人は通常、次の目標を最後に達成したことよりもあまり高すぎなくやや上に設定する。」(クルト・レヴィン)

ナウシカの「瘴気マスクをつけろ! 雲下に降りてバージを救出する」というセリフ。「雲下」がbelow the cloudsと表現されています。

Ready? Now! Put on your masks. I’m going to below the clouds to rescue the cargo barge.

put on=~を身に付ける

cargoは「積荷」、bargeは「荷船」を意味します。I’m going to (the place) below the clouds…のthe placeが省略された形と考えてよいでしょう。

「真上に」はover、「真下に」はunderで表します。『実践ロイヤル英文法』には「離れている場合にも接触している場合にも使える」(p.305)と説明されていますが、「覆いかぶさる」という場合には下にあるものと接触してかまいませんが、「机の上に」何か置いてあるとき、over the diskとは言わないかと思います。その場合は必ずon the deskになります。

ポムじいさんの「わしのおじいさんが言ってたよ。岩たちが騒ぐのは山の上にラピュタが来とるからだとな」という発言。ここでの「山の上に」が英語版ではover the mine (「鉱山の上に」)と訳されています。

“Great-grandpa used to tell me the rocks become restless when Laputa appears over the mine.”

used toは過去の習慣的行為や継続的状態を表わします。restlessは「絶えず動いている」、appearは「現れる」、mineは「鉱山」です。

overは上に覆いかぶさるイメージです。サツキがバスの停留所でトトロに傘を貸し、「こうやって使うのよ」という場面がありますが、英語版では

Hold it over your head, like this.

と訳されています。

「~の真下に」はunderです。

【例文】I certainly have been guilty of trying to sweep things under the carpet. ─Kenneth Brangh

「いろんなものをカーペットの下に掃こうとしたことで確かに私は罪を犯している。」

進行・通過を示す前置詞

『千と千尋の神隠し』での千の「線路を歩いてくる」という発言が英語版ではI’ll walk back along the tracksと表現されています。

「昔は戻りの電車があったんだが、近頃は行きっぱなしだ。それでも行くか千?」「うん、帰りは線路を歩いてくるからいい。」

“The train used to run in both directions, but these days it’s a one-way ride. Still want to go?” “Yep. I’ll walk back along the tracks.

in both directions=両方向に; these days=最近; one-way ride=片道乗車
yep=yes; walk back=歩いて戻る; track=線路

前置詞alongを「~に沿って」という意味で覚えている人も多いかと思います。この意味で覚えると千の I’ll walk back along the tracks. を「線路に沿って歩いて戻る」という意味に捉えてしまいますが、日本語版では「線路を歩いてくる」と言っています。つまり線路の中を歩くと言っているわけです。alongは「道や川などのラインのA地点からB地点まで」を意味します。walk along the riverだと「川に沿って歩く」と訳してい良いです。なぜなら川の中を歩くことはまず考えられないので川岸を歩いているに違いないからです。これに対し、walk along the sidewalkだと歩道に沿って歩くのではなく、歩道を歩くことが容易に推測されます。walk along the roadだと「道を歩く」のか「道に沿って歩く」のかこれだけでは判断できません。車が多く行き来する道路だとすれば道路の脇を歩くに違いありません(つまり「道路に沿って歩く」)。車がほとんど通らない道路の場合は道路を歩くに違いありません。

「~を通り抜けて」はthroughで表します。アシタカが傷ついたサンをかついでたたら場を出る時、「わたしは自分でここへ来た。自分の足でここを出て行く」と言いますが、英語版では「わたしは今朝、この門を通り抜けた。いま同じように出ていく」と意味の英語になっています。

I walked in through this gate this morning. Now I’m going to leave the same way.

walk in=歩いて中に入る; gate=入り口、門扉; leave=去る; the same way=同じように

「この門を通り抜けて」はthrough this gateと訳されます。

もう一つthroughの表現を見てみましょう。

「千尋は元来た道をたどればいいんだ。でも決して振り向いちゃいけないよ、トンネルを出るまではね。」

Just go back the way you came. You’ll be fine. But you have to promise not to look back, not until you’ve passed through the tunnel.

go back=元の所に戻る; the way you come=あなたが来たように
look back=後ろを振り返る
pass through=~を通り抜ける; not until=~まで…ない

passは「通る、通過する」という意味です。pass throughで「~を通り抜ける」という意味になります。

周囲を示す前置詞

「~の周りに」という意味の前置詞はaroundですが、これが「~のそばに」、「~の近くに」という訳されることがあります。ただしこう訳されても「あるものの周りの所に」という意味であることには変わりありません。around the cornerは「角を曲がったところ」と訳されますが、これも「角のあたり」という意味です。

オソノが赤ちゃんのおしゃぶりを置き忘れた女性について語ると、キキが「あそこを曲がった乳母車の人でしょう?」という場面がありますが、

The woman with the baby carriage who just went around the corner.

baby carriage=乳母車; just=ちょうど

と訳されています。

前後関係を示す前置詞

「~の後ろに」を意味する前置詞はbehindです。キキの「雁の群れよ。すてき」のセリフでbehindが使われています。 「わあ! 後ろにいるのが誰か見て。雁よ!」

Wow! Look who’s behind us. behind geese!

wild=野生の; geeseはgoose (ガン)の複数形です。

接近・遠隔を示す前置詞

「~のそばに」という意味で思い出すのはbesideかもしれませんが、byの方がよく使われます。byは「~によって」だけでなく、「~のそばに」という意味もあるのをお忘れなく。

『耳をすませば』の場面。雫の小説をゆっくり読みたいと司朗は言っているのに、いますぐ全部読めとむちゃぶりをする雫。仕方ないので司朗は「わかりました。すぐ読ませてもらいます。さあ、火のそばへ。今日は冷えこむ。」と言います。

I understand. I’ll read it right away. Have a seat by the fire. It’s getting cold.

right away=immediately
have a seat=座る; get cold=寒くなる

方向・到達を示す前置詞

「Aへ」という場合、to Aもしくはfor Aになります。『実践ロイヤル英文法』では「~へ」という意味でAが到達点の場合はto、「~の方へ」という意味でAが到達の方向の場合はforを用いると説明されていますが、実際にはこの理屈が2つを使い分けするのは難しいかと思います。

『天空の城ラピュタ』でシータが “The robot was leading us to this place, Pazu.” という場面があります(ちなみに日本語版ではこれに相当するセリフはありません)。『実践ロイヤル英文法』で言うと、「この場所」という到達点が示されているので、for this placeではなくto this placeになっているということになります。ただしそういう風に理解するよりも、lead A to Bは「AをBに導く」という意味で使われるからここではfor this placeではなくto this placeになっていると理解する方がわかりやすいです。

lead A to B=AをBに導く; place=場所

ドーラ「みんな、よーくお聞き。ゴリアテは既にラピュタへ出発した。本船はこれより追跡を開始する。」

Attention, all hands! Now hear this! Goliath is already underway for Laputa. We’re gonna set sail and go after them.

attention=注意; all hands=総員
underway=航行の
gonna=going to; set sail=出帆する; go after=~の後を追う

ここでドーラはGoliath is already underway to Laputaとは言っていません。for Laputaと言っています。to Laputaだとラピュタの場所がすでにわかっていてそこに向かっているというニュアンスになります。forが「~の方へ」とよく訳されるのは、到達点が明確にはわかっていないからです。さらに到達点が明確でなく大体「そっちの方へ」という場合はtowardを使います。toward Laputaだと、「ラピュタには到達しなくてもとにかくラピュタがある方へ行こうぜ」というニュアンスになります。

【例文】The discovery of agriculture was the first big step toward a civilized life. ─Arthur Keith

「農業の発見は文明生活への大きな第一歩だった。」 この場合とにかく文明生活の方に向かっていればいいわけなのでtowardが使われています。

内外・間を示す前置詞

inintoも「~の中に」という意味ですがintoの方が動的なインプレッションを与えます。

ナウシカ「きれいな水と土では腐海の木々も毒を出さないとわかったの。汚れているのは土なんです。」

I found that with clean water and soil, the plants from the toxic jungle aren’t poisonous. All the poison is in the soil.

toxic [ナウシカ] soil=土; plant=植物; toxic jungle=腐海; poisonous=有毒な; poison=毒

All the poison is in the soil. は直訳するとinは「すべての毒は土の中にあるの。」 ここでの「~の中に」は静的なのでintoではなく、inが用いられています。

『魔女の宅急便』でキキがニシンのパイを届ける場面。いまにも大雨が降りそうで、英語版でジジが「キキ、ぼくたちは雲の中に飛び込むべきではないと思う。」と言う場面があります(日本語版ではジジはこういうセリフを発していません)。

“Kiki, I don’t think we should be flying into those clouds.”

ここでのintoはいまにも中に入りこむというイメージです。toward the inside of Aという意味ですね。雲の外から雲の中へ入っていくからinではなくintoが用いられています。

「~の中から外へ」はout ofを使います。

カルシファーがソフィーにこう言います。「え~、無理だよ。おいらは契約で暖炉から出られないんだ!」 今いる暖炉から外に出るからout ofなわけです。

“I can’t! It’s impossible! No one but Howl can take me out of the hearth.”

no one but A=A以外の誰も; take=~を連れ出す; hearth=暖炉の前、囲炉裏、炉床

「~の外に[で]」はoutsideを使います。outside ofと言う場合もあります。雫と学校で待ち合わせをしていたのに、雫がいくら経っても来ず、夕子がキレ気味になってこう言います。「11時に昇降口っていったくせに15分も太陽の下にいさせて!」 英語版では「昇降口」が「学校の外で」に変わっています。

You said to meet outside the school, not inside. I waited in the sun for 15 minutes.

「~の間に」と言う場合、「2つのものの間に」はbetween、「3つのものの間に」はamongを用います。

高性能焼夷弾や徹甲弾を売りつけようとされてポルコが「ボウズ、俺たちゃ戦争やってるんじゃねえんだよ。またな。」と言うと、「親方、戦争と賞金稼ぎとどう違うの?」と尋ねられます。「戦争とをすることと賞金稼ぎの間の違い」がthe difference between fighting a war and bounty huntingと表現されています。

“Hey, easy, kid. I’m just a bounty hunter. I’m not fighting a war.” “Come again. So, what’s the difference between fighting a war and bounty hunting?”

bounty hunter=賞金稼ぎ(人の場合)
fight a war=戦争を行う
bounty hunting=賞金稼ぎ(行為の場合)