英文法

定冠詞theの6つの用法

※『例文で英単語を4800語覚える』講座受講生を対象としたサブノートです。 テキストは旺文社の『表現のための実践ロイヤル英文法』を使用。「第15章 冠詞」の「176 定冠詞の用法」(pp.371-4)を熟読してください。

冠詞には不定冠詞のaとan、特定のものを指す定冠詞のtheがあります。不定冠詞aとanは数えられる名詞にしかつきませんが、定冠詞theは数えられる名詞にも数えられない名詞のどちらにもつきます。不定冠詞aとanは単数形の名詞にしかつきませんが、定冠詞theは単数形にも複数形にもつきます。定冠詞theの用法は包括的に取り上げると、それこそ一冊の本が書けるほどの量になりますが、今回は特に重要なポイントにだけフォーカスします。

文章や会話で前に出てきたことがある名詞

文章や会話で前に出てきたことのある名詞が再度出てくる場合、その名詞は特定化されるのでtheがつきます。

【例文】
I bought a camera in Bic Camera. The camera is Sony’s α9 II.
ビックカメラでカメラを買いました。ソニーの α9 IIです。

【例文】
Corruption is worse than prostitution. The latter might endanger the morals of an individual, the former invariably endangers the morals of the entire community. ─Karl Kraus
腐敗は売春より悪質だ。売春は個人のモラルを危険にさらすが、腐敗は必ずコミュニティ全体のモラルを危険にさらす。─カール・クラウス

「前者」と「後者」は前に出てきたものを指すので必ず特定できます。だからこの意味ではformerとlatterはthe former, the latterとなり必ずtheがつきます。

文脈でそれが何かわかる名詞

文章や会話で初出でも、それが何か文脈でわかる場合は特定化できるのでtheがつきます。

【例文】
It’s cold. Close the window right now.
寒いわ。すぐ窓を閉めて。

窓が複数あっても空いている窓が1つだけなら、「窓を閉めて」と言われたときに言われた方はどの窓のことかわかりますよね。だからwindowにtheがつきます。空いている窓が2つ以上あり、空いている窓を全部閉めて、という場合は Close the windows. となります。空いている窓が2つ以上あり、その中の特定の窓を1つ閉めて、という場合は Close that window. と言うことができます。空いている窓が2つ以上あり、どちらでもいいから1つの窓を閉めて、という場合は Close a window. と表現されます。

【例文】
This car is not good. The steering wheel is not centered while driving straight down the road.
この車は良くないです。直進しているときにハンドルのセンターが中央に戻りません。

車の「ハンドル」はsteering wheelと言います。steering wheelは初出ですが、その前にcarが出てきて、そのcarのsteering wheelについてであることを特定するためにtheがついています。

ただ一つしかないもの

会話で初出であっても、もともと一つしかないものであればそれが何か特定できるのでtheがつきます。

宮廷に呼び出されたハウルに対し、ソフィーは「ねえハウル、王様に会いに行きなさいよ」と言います。

“You know, Howl, I think that you should see the king.”

see=~に会う

王様は一国に一人しかいないのでthe kingとなります。

太陽も1つなのでthe sun、月も1つなのでthe moon、惑星は多数ありますがthe planetだと「地球」(注: 地球以外の惑星が話題になり、その惑星のことという意味でtheがつく場合は、このthe planetは「地球」ではありません)、the earthはたった一つしかない「地球」です。ただし、本来1つしかないものでも、その中の種類についてだと不定冠詞がつきます。例えば、月は一つしかないので通常the moonとなりますが、複数の種類の月があると考えると不定冠詞のaがついて、a full moon(満月)、a half moon(半月)、a crescent moon(三日月)となります。

And, guess what the radio says there’ll be a full moon!

there’ll=there will

Guess what? (通常、最後にクエスチョンマークがつきます)は直訳すると「何であるかを推測して」という意味になります。良いニュースがあって喜んでいるときに、「何で喜んでいるか当ててみて」といったときに使う表現です。

修飾語がついて特定のものに限定されている名詞

【例文】
The city of Kyoto is one of the main tourist destinations in Japan.
京都市は日本の主要な観光地の1つです。

cityはどの「市」か特定されないと不定冠詞のaがついてa cityと表現されますが、ここでは「of+名詞」で後ろからどの「市」か限定されているのでtheがつきます。ちなみに「名詞+of+名詞」の形だと最初の名詞には必ず定冠詞theがつくと思っている人が多いですが、そういうわけではありません。修飾語がついても同種のものが2つ以上あれば特定できないのでtheがつきません。

『耳をすませば』で司朗は雫に雫が小説を書いたら自分が最初の読者になりたいと言います。そこで雫は書いたばかりの小説を見せに司朗の家に行きます。そして彼にこう言います。「約束です、最初の読者になってください。」

“You’re the first one to read it, just as promised.”

as promisedは「約束通りに」という意味です。justは exactlyという意味で「ちょうど」「まさに」と訳せばよいです。

【例文】
You know what the fastest growing religion in America is? Statism. The growing reliance on government. ─Marco Rubio
アメリカで最も急速に成長している宗教が何か知っていますか? 国家主義、政府への依存の高まりです。 ─マルコ・ルビオ

最上級の形容詞がつくと一番のものと特定できるのでtheが必ずつきます。宗教は多数あり、その中で急速に成長している宗教も複数あるでしょうが、「最も」急速に成長している宗教は一つしかありません。

「the+形容詞」で「~な人々」の意味になる

人に関する形容詞の前にtheがつくと、「~な人々」という複数の意味の普通名詞になります。

【例文】
When the rich wage war, it’s the poor who die. ─Jean-Paul Sarte
金持ちが戦争をすれば、貧しいものが死ぬ。─ ジャン・ポール・サルトル

the richは「金持ちの人たち」という意味の複数形なので the rich wages…ではなく、the rich wage…となります。

【例文】
A newspaper is a device for making the ignorant more ignorant and the crazy crazier. ─H. L. Mencken
新聞は無知な人々をより無知にし、とち狂った人たちをさらにおかしくする。─H・L・メンケン

ignorantは「無知な」という意味の形容詞です。

【例文】
Disobedience is the true foundation of liberty. The obedient must be slaves. ─Henry David Thoreau
不服従は自由の真の基礎である。従順な者は奴隷にちがいな。─ヘンリー・デヴィッド・ソロー

obedientは「従順な」という意味の形容詞です。

【例文】
Necessity makes even the timid braze. ─Sallust
必要は臆病者でさえ勇敢にする。─サルスト

timidは「臆病な」という意味の形容詞です。

【例文】
Natural selection, as it has operated in human history, favors not only the clever but the murderous. ─Barbara Ehrenreich
自然淘汰は、人類の歴史の中で作用してきたように、利口な者たちだけでなく、残忍な者たちにも有利に働く。─バーバラ・エーレンライク

cleverは「賢い」、murderousはextremely dangerousという意味の形容詞です。

【例文】
The weak can never forgive. Forgiveness if the attribute of the strong. ─Mahatma Gandhi
弱い者は許すことができない。それは強い者の属性だ。─マハトマ・ガンジー

weakは「弱い」、strongは「強い」という意味の形容詞です。

「the+形容詞」で「~なもの、~なこと」の意味になる

「the+形容詞」で形容詞が人に関するものでない場合は「~なもの」、「~なこと」という抽象名詞的な意味になります。

【例文】
Art is the elimination of the unnecessary. ─Pablo Picasso
芸術とは不必要なものを排除することである。─パブロ・ピカソ

unnecessaryは「不必要な」という意味の形容詞です。

【例文】Politics is the art of choosing between the disastrous and the unpalatable. ─John Kenneth Galbraith
政治は、悲惨なものと不快なもののどちらかを選択するアートである。─ジョン・ケネス・ガルブレイス

disastrousは「悲惨な」、unpalatableは「不快で受け入れ難い」という意味の形容詞です。ガルブレイスは政治における選択というのは常に困難であり、「不快で受け入れ難い」選択肢以外でとりえるのは「悲惨なもの」しかないと述べています。

【例文】When you’re in the news business, you always expect the unexpected. ─Helen Thomas
ニュース業界にいると、いつも予期せぬことを期待するものだ。─ヘレン・トーマス

unexpectedは「予期しない」という意味の形容詞です。