助動詞は動詞と結びついて意味を追加します。品詞については以下の記事を参照してください。
助動詞は「助動詞+動詞の原形」の形で動詞に様々な意味を追加します。以下、助動詞を一つずつ見てみます。今回は助動詞canとcouldと、その代用として使われる助動詞ではないbe able toの3つです。
can
否定形はcan’tもしくはcannotになります。前者の方が微妙に口語的ですが、どちらを使っても構いません。疑問文は「Can+主語+動詞の原形…?」という形になります。
He can hug Suzu. (彼はすずちゃんをハグすることができる)
He can’t hug Suzu. (彼はすずちゃんをハグすることができない)
Can he hug Suzu? (彼はすずちゃんをハグすることができますか?)
canは「~できる」(能力・可能)、「~することがあり得る」(可能性)、「~してもよい」(許可)の3つの意味があると『実践ロイヤル英文法』には説明されていますが、「可能」と「可能性」の差はあいまいです。また「許可」の「~してもよい」は「~することができる」と言い換えることができます。そのためcanの3つの意味はすべて「~できる」と覚えてもとくに問題はありません。例えばEven you can enter Tokyo University. は「可能性」であっても「あなたでさえ東京大学に入ることができる。」と訳して何の問題もありません。また、 「ここに座っていいですか?」 という意味のCan I sit here? も「ここに座ることができますか?」という意味に捉えてもとくに支障はありません。
能力・可能 「~できる」
『実践ロイヤル英文法』では「能力」と「可能」が区別されていますが、特に2つを区別する必要はありません。どちらも「~できる」という意味だと覚えておけばオーケーです。
ナウシカが「私たちマスクをしてない!」と言うと、アスベルが「そうなんだ。ここの空気は澄んでいるんだよ」と返答します。
“How can we be breathing without our masks?”
“I don’t know. Somehow the air down here is clean.”
breatheは「呼吸する」、somehowは「どういうわけか」。the air down hereは「下にあるここの空気」といった感じの意味です。「私たちマスクをしていない」が「マスクなしでどうやって私たちは呼吸できるの?」と意訳されています。ここでナウシカは現在進行形を用いて、今「可能」である状況が「現在進行中」(つまり、すぐにそれが「不可能」になる可能性を含んでいる)であることを示していますが、実際にはネイティブはcanの後に進行形がくる表現をほとんどしません。ここは本来は、How can we breathe without our masks? と言うべきです。
canの否定の「~できない」はcan’t (もしくはcannot)です。キキが初めての配達で「これでお母さんに手紙を書けるもの」とジジに話します。
I can‘t wait to write Mom and Dad about my new business.
「お父さんとお母さんに私の新しいビジネスについて手紙を書くのが待ち遠しいわ」と言っています。can’t wait to doは「~することを待つことができない」→「~するのが待ち遠しい」という意味です。
可能性 「~することがあり得る」
「能力・可能」と「可能性」の違いはあいまいです。「君だったら東大に合格できるよ」という発言は、「東大に合格できる」とも「東大に合格することがありうる」のどちらの意味にもとれます。この点に関して日本語と英語の語感に特に違いはないので、日本語の感覚で「canは~できる」という意味と覚えて特に支障は生じません。
『天空の城ラピュタ』で嵐に巻き込まれたパズーが「父さんは、竜の巣の中でラピュタを見たんだ! 」、ドーラが「ばかな!入った途端にバラバラにされちまうよぉ。 」と言います。
“This is just the kind of storm my father saw and Laputa’s in the middle of it!”
“It can’t be. It’d be smashed to pieces!”
storm=嵐
see-saw-seen=~を見る
in the middle of=~の真っただ中で
be smashed to pieces=粉々に砕かれる
ドーラの It can’t be. という発言はbeの後が省略され(何という単語が省略されているか推測が難しいです)、「それが~であることはあり得ない」、つまり「そんなはずはない」と言っています。She can’t be a member of AKB. だと「彼女がAKBのメンバーであることはあり得ない」→「彼女がAKBのメンバーであるはずがない」という意味になるのと同じことです。
許可・依頼「~してもよい」と禁止「~してはいけない」
canは「~してもよい」という許可、can’t/cannotは「~してはいけない」という禁止を意味することがありますが、これは「~できるよ」、「~することはできないよ」という意味で捉えても大丈夫なので、「can ~できる」、「can’t/cannot ~できない」という意味で「許可」を理解してとくに問題ありません。また助動詞mayも「許可」を意味しますが、canの方がより口語的です。
「許可」の意味では疑問文が使われることが多いです。吉岡里帆ちゃんのお父さんに結婚の許可を求めてこう言います。
Can I marry her? 彼女と結婚してもよろしいでしょうか?
これが肯定文だと「可能」の意味になってしまいます。
I can marry her. 私は彼女と結婚することができる。
配達予定のぬいぐるみの猫を森の中へ落したキキは、ジジにぬいぐるみのふりをするよう言います。郵便物をなくしたらちゃんと顧客にそれを伝えるべきですが、キキはばれなければいいやという感じで郵便物の受取人をだまそうとするわけです。とんでもない配達業者ですね。ジジが 「息は?」とキキに尋ねると、「できるだけしないで」と冷たく言われます。英語版では「息をしていもいい?」、「だめ! 息をしちゃだめよ。ぬいぐるみのふりをするのよ」という意味になってます。
“Can I breathe?”
“No! No breathing. Act stuffed.”
キキが旅立つ前の場面です。お父さんが「母さんの若いころによく似てる」と言うと、「おとーさん。ねえ高い高いして」とキキが「依頼」します。
“You look just like your mother, when she was young.”
“I’m glad about that. Dad, can you lift me up high, like when I was little?”
lift A upは「Aを持ち上げる」、それにhighがつくと「Aを高く持ち上げる」という意味になります。ここでのCan you…?は「~してもらえますか?」という「依頼」を表わしています。
could
couldはcanの過去形です。「能力・可能」の意味では過去形の時にcanではなくcouldになりますが、「可能性」と「許可・依頼」の意味では過去のことだからというのではなく、canよりもさらに弱い表現というニュアンスでcanの代わりにcouldが使われます。「弱い表現」というのは「依頼」においては「より丁寧」ということを意味します。
能力・可能 「~できた」
couldは過去の「能力・可能」を表わすことができる。ただし、過去のことであるわかる文脈でない場合は、仮定法のcouldと受け取られる可能性が高くなるので、肯定文で過去の「能力・可能」を表わすときはwas able toを使う方がよいです。
「トトロ! トトロ。メイが迷子になっちゃったの。捜したけど見つからないの!」
英語版ではこう訳されています。
Totoro! Totoro, Mei’s lost. I looked everywhere for her, but I couldn‘t find her.
be lostは「迷子になる」、look forは「~を探す」、everywhereは「所かまわず、あらゆる所」という意味です。I couldn’t find her. は I was not able to find her. と言い換えることもできますが、前文のI looked everywhere for her. が過去形の文章なので、couldがcanの過去形として使われていることが容易に推測できます。そこでここでは可能の意味の過去形でもcouldを使って何の問題もありません。
可能性 「~することがありえる」
couldは「能力・可能」だと過去形の意味になりますが、「可能性」だと現在のことを表します。では、過去のことについての可能性はどう言えばいいのか、ということになりますが、その場合は「could have+過去分詞」で表現します。
オソノが風邪をひいたキキにトンボがお店に来たことを伝えます。「病気だって言ったら “魔女も病気になるんですか?” だって」。英語版ではこうなっています。
When I told him you were sick, he asked me how a witch could catch cold in the first place.
witchは「魔女」、catch coldは「風邪をひく」、in the first placeは「そもそも」という意味です。 ask me how a witch could…は第4文型の文ですが、ここでのcouldは「可能性」を表わしています。「魔女が風邪をひくことがありうるの?」というニュアンスの文章ですね。
「could have+過去分詞」は 「~することがありえた」という意味で過去のことについての推量を表わします。
パズーがシータにこう言います。「なぜ雲が晴れたのか、気になってたんだ。こんな風にならなければ、やつらは上陸できなかったはずなんだ。 」
I was wondering why all of the storm clouds just disappeared. Then I realized if they hadn’t cleared up the army couldn’t have made a landing.
wonder=不思議に思う; storm=嵐; disappear=消える; realize=understand a situation; clear up=天気がよくなる; make a landing=上陸する、着陸する
ここでのThe army couldn’t have made a landing. をThe army couldn’t make a landing. と言うと、「可能性」ではなく「可能」(~できなかった)という意味になるので注意してください。
許可・依頼 「~してもよい」
「~してもよろしいでしょうか」、「~してもらえますか」と許可・依頼の疑問文を作るときは、canでもかまいませんが、couldにした方がより控えめで丁寧な表現になります。
千尋が湯婆婆に仕事くれと頼む場面です。 「あっ。ここで働かせてください!」「まーだそれを言うのかい!」
“Excuse me. I was wondering if you could give me a job?”
“I don’t want to hear such a stupid request.”
I was wondering if…は「お願いがあるのですが…」もしくは「~してもよろしいでしょうか」という意味の定番の表現です。wonder if…の原義は「~かどうか不思議に思う」です。stupidは「ばかげた」、requestはそのまま「リクエスト」という意味です。
ここでI was wondering if you can…と言ってもかまいませんが、couldの方がより控えめだし、またI was wondering if…という表現自体が控えめなのでこの表現では圧倒的にcanよりもcouldが使われます。
be able to
「~できる」という意味でcan/couldの代わりにbe able to/was able toという表現を使えますが、完璧な同意語というわけではなく、使い分けが必要であるということを理解してください。
canは「身に備わっている能力」、be able toは「一時的な能力」
My baby could stand up and walk by herself. だと「私の赤ちゃんは自分で立って、歩くことができた」という意味ですが、couldではなくMy baby was able to…だと何かの理由でその時だけそれができたというニュアンスが含まれます。「過去の一回の行為」ができたという場合は、can/couldではなく、be able toを使いましょう。
未来や完了形の可能を表わす場合はbe able toを使う
助動詞を続けることはできないというルールがあるので「私は泳ぐことができるようになるだろう」という意味でI will can swim. ということは絶対できません。この場合は必ず、I will be able to swim. になります。助動詞が繰り返し使われることを避けるためにbe able toという表現が使われているというわけです。「have+過去分詞」のhaveも助動詞なのでcan/couldといっしょに使うことはできません。「私は東京まで歩いて行くことができた。」はI have been able to walk to Tokyo. になります。
『耳をすませば』でイタリアに旅立つ聖司に雫はこう言います。「来てくれてとてもうれしかった。見送りにはいけないけど帰りを待ってるね。」
I’m just glad I was able to see you again. I can’t go to the airport with you but I’ll be waiting for you when you come back.
be glad that…=~してうれしい; airport=空港; wait for=~を待つ; come back=戻る
ここで雫はI’m just glad I could see you again. と言っても間違えとまでは言えませんが、肯定文で「~できた」と言うときは、過去のことであるという事が明白でない限り、couldではなくwas able toを使うことが多いです。ちなみに雫は聖司とお別れする直前なので(つまり彼に会えたことが過去のことになる直前)過去形が使われています。